そら豆嫌いなピタゴラス
日本でそら豆は秋にまかれ春になると収穫が始まります。
一番おいしくなるのは4月から6月の間です。
そら豆は収穫された後にみるみる鮮度が落ちるため、朝採りのものをその日の内に食べるのが理想といわれます。
○
そら豆の原産地は地中海沿岸から中近東にかけての地域です。
紀元前2500年頃のものと考えられる湖上住居跡がスイスで発見され、その遺跡からそら豆が発見されており、太古から人間がそら豆を用いてきたことが分かっています。
○
古代ローマやギリシャでは乾燥そら豆にニンニクとタマネギを加えた料理を食べていたようです。
また、ギリシャでそら豆は投票での投票札代わりにも利用されていました。
○
古代においてそら豆は儀式にも利用されています。
そら豆には死者の魂が宿ると考えられていたからです。
紀元前5世紀頃のエジプトでは、死者の魂が宿るそら豆を神官が嫌ったため、庶民もそら豆を食べなかったということが記録に残されています。
古代ローマやギリシャでもそら豆は死者の魂や出産と結びつけて考えられており、死者の供養にそら豆が用いられました。
○
地中海や中近東を中心に栽培が始まったそら豆はその後アジアにも伝わり、中国ではあの豆板醤の原料にされたのです。
『四川料理「天悠」の自家製調味料』によれば、豆板醤は長江沿いにある四川省郫県(ピィシェン)などで生まれ、豆板醤の「豆板」とはそら豆のことを指し、正しくは「豆瓣」と書くようです。
日本のスーパーなどで販売されている豆板醤は発酵期間が短く辛味だけが強調されていますが、長時間の熟成で旨味をたっぷり含んでいるのが本来の豆板醤の特徴だといいます。
四川の伝統的豆板醤造りでは、夏の暑い時期に乾燥させたそら豆を砕いて皮を取り除き、一晩水に浸けた後、水を切ってからカボチャの葉などで覆います。
すると数日でカビが繁殖するので、これに塩や小麦粉、そしてとうがらしや花椒(かしょう)などをを加えて壺に入れて熟成させて造られます。
○
そら豆は中国から日本に伝来したと考えられていますがその時代は明らかになっていません。
ただ、室町時代末期の文献にそら豆の栽培について書かれたものがあるようです。
「まめ」とは、形が「まるみ」を帯びていることに由来した言葉だという説があります。
そして「そらまめ」という言葉は、そら豆が生っているときにサヤが空を向いているためにその名がつけられたといいます。
そら豆は「蚕豆」とも書きますが、これはサヤの形が蚕に似ているためだという説や、蚕の季節に豆がなるためだという説があるようです。
○
ところで、そら豆の原産地である地中海周辺や中近東地域のスペイン、イタリア、ギリシャ、アルメニア、ユダヤなどではそら豆アレルギーの人が多くいます。
これは遺伝的病気だと考えられており、特にそら豆を生で食べたり花粉を吸うと発症しますが、加熱したそら豆でも発症の危険があるようです。
このアレルギーをもつ子供が花粉を吸った場合、ショック症状を起こして一日から二日の間に死亡することがあり、大人でも回復までに四週間ほど掛かります。
○
紀元前6世紀頃の古代ギリシャの哲学者であるピタゴラスもそら豆アレルギーだったのではないかといわれています。
ピタゴラスは、弟子達にそら豆を食べたり、そら豆畑に近づくことを禁じていたからです。
ピタゴラスの最後についてはいくつかの説がありますが、その一つはそら豆に関連しています。
敵に追われて逃走したソクラテスはそら豆畑に行き当たり、そら豆畑に入る以外に逃げ道がなくなったため、やむなく逃げるのを断念して敵に捕まって処刑されたというのです。
ピタゴラスも死者の魂がそら豆に宿ると信じていたようなので、そのためにそら豆を食べることを弟子達に禁じたとも考えられますが、死を目前にしてそら豆畑に入ることを嫌ったのだとしたら、苦しいアレルギー症状よりも死を選んだのではないかとも想像されるのです。
<参考書籍>
吉田よし子(1998)『野菜物語—大地のおいしい贈りもの』TOTO出版
吉田よし子(2000)『マメな豆の話—世界の豆食文化をたずねて』平凡社
日本ベジタブル&フルーツマイスター協会(2003)『野菜のソムリエ—おいしい野菜とフルーツの見つけ方』小学館
月刊食生活編集部(1992)『グルメのおもしろ語源集—食べものふしぎ博物館』コア出版
シルヴィア・ジョンソン(1999)『世界を変えた野菜読本—トマト、ジャガイモ、トウモロコシ、トウガラシ』晶文社
<そら豆関連>
| ピタゴラ装置DVDブック1 ピタゴラ装置 by G-Tools |
| そらまめくんのベッド なかや みわ by G-Tools |
| からだイキイキ!豆食生活—大豆・いんげん豆・えんどう豆・そら豆etc. ユーイーピー 永山 久夫 by G-Tools |
| 固定リンク | トラックバック (1)

キャベツとレタスは似ていますが、レタスがキク科植物の一年草(または二年草)であるのに対して、キャベツはアブラナ科で本来多年草の植物です。(関連:「
たけのこを採るために育てられている竹には孟宗竹(もうそうちく)や淡竹(はちく)、苦竹(まだけ)などがあります。
たけのこは見た目で雄と雌の区別をすることがあります。
店で売られるたけのこの水煮のひだの部分に白い固まりがついていることがあります。
中国でさつまいも栽培が広まりつつあった16〜17世紀に、中国福建省の対岸に位置する琉球(現在の沖縄)にもさつまいもは伝えられました。
農耕の歴史が始まってから、琉球でも稲や麦など様々な穀物の栽培が試みられましたが、珊瑚礁の島であることから耕作に適した土地が少なく、しかも貧土が多かったため農作物の生産性は低く、高温多湿の気候や毎年起こる台風や旱魃などによる被害も多発したため、琉球での農作はなかなかうまくいかず度々飢饉が起きていました。