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2006/12/09

パスタの世界への広まり

17世紀頃から政情の安定化に伴いナポリの町では人口が増加し、これによって生鮮食品の供給が不足してパスタなどの小麦粉食品が重視されるようになり、ナポリでパスタ製造機が発達しました。(関連:「パスタ製造機」)
18世紀から19世紀にかけて産業革命が起きると、パスタ製造機は更に飛躍的な進歩を遂げました。
それ以前は人力で動かされていたパスタ生地押し出し機械は蒸気機関を使用した圧搾機に取って代わられ、製粉機や生地をこねる機械も考案されるなど、次々と新しいパスタ製造機が登場したのです。

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パスタ製造機の発達によりパスタの生産性は著しく向上しました。
パスタ発祥地と考えられているシチリアでも(関連:「パスタとマルコ・ポーロ」)、16世紀頃のパスタの価格はパンの3倍もしており、一般庶民はパスタを日常的に食べてはいませんでしたが、産業革命時に発明されたパスタ製造機や従来品が改良されたおかげでパスタ生産量は増加し、これに伴いパスタの価格は下がり、かつては高級品に近い食べものだったパスタは労働者の食べものへと変わっていったのです。

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産業革命前の北イタリアでは他地域からの商品流通が少なく、南イタリア産乾燥パスタも北イタリアでは常食されず、代わりに生パスタが食べられていました。
この歴史の影響は現在のイタリア食文化にも現れており、ラザニアやカネッローニ、ラビオリ、タッリャテッレなど生パスタを用いて作られた伝統料理はイタリア北部に多く、スパゲティやマカロニなどの乾燥パスタを使ったものは南イタリア料理に多いのです。

19世紀になって温風乾燥機が登場したことで、乾燥パスタ製造は最初の工程である小麦粉を捏ねるところからの乾燥を行う最後の工程までを一貫して機械で行えるようになり、それまでは乾いた気候の南イタリアで作られていた乾燥パスタが北イタリアでも製造されるようになりました。
また、この時代にヨーロッパの産業や商業の中心が地中海沿岸諸国から欧州北方諸国に移っていった事情もあって、イタリア国内でも南部よりも北部の方が地理的に重要となり、 乾燥パスタの生産拠点も南イタリアから北イタリアへと移されていったのです。
この時代に北イタリアで創業されたヴィトーニやデ・チェッコなどのパスタ製造会社は現在でも大手パスタメーカーとして知られています。

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ナポリのパスタ職人が発展させたパスタ製造でしたが、産業革命後には北イタリアが生産拠点となり、北イタリアで大量生産されるようになったパスタはイタリア全土に広まっていきました。
19世紀にはフランスやドイツなどイタリア周辺国にもパスタを食べる文化が伝わり、イタリアから移住した人達によってアメリカへもパスタは広められて行ったのです。

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05ilaq30 日本でも明治の初めには西洋料理店でマカロニ料理が出されるようになっていました。
しかし、この時代の多くの一般庶民がパスタを認知していたわけではなく、明治5(1872)年に発刊された「西洋料理指南」では、「我が国にはマカロニを作る器械がないのでうどんの形につくって図の長さに切って代用する」といったマカロニ料理の説明がされています。

明治の初めに役所に提出された西洋料理店の開業許可申請書の中では、マカロニが素麺と訳されていました。
明治時代のマカロニのその他の和名としては、「穴あきうどん」「管通麺」「イタリア管麺」「管麺」「管状そうめん」などがあり、スパゲティーには「西洋うどん」や「西洋そうめん」「イタリアうどん」などの名が付けられていたようです。

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日本で国産マカロニが初めてつくられたのは明治40年代のことでした。
新しいタイプのうどんの乾麺をつくり、これを横浜に住む西洋人に売り込みに行った新潟県加茂町の石附吉郎氏が、お客の西洋人からマカロニを見せられて、逆にこういうタイプの麺を作って欲しいと要望されました。
これを切っ掛けとして石附吉郎氏はマカロニ製造機を独自開発し、この石附吉郎氏のマカロニ製造機によって作られたマカロニが日本で最初の国産マカロニになったといわれています。

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その後、昭和7年には兵庫で輸入器械を使ったマカロニの大量生産が始められていますが、この頃は一部の高級レストランでしかマカロニは使われておらず、国内需要が少ないことから国産マカロニは輸入品に対抗できませんでした。

日本でパスタ消費が伸びたのは日本の食が洋風化し始めた昭和30年以降のことです。(関連:「インスタントラーメンの誕生」「魚肉ソーセージと肉食」)
昭和30年頃、米が大豊作になったことから小麦粉の供給が過剰になり、市場でダブついた小麦粉を使って製麺会社が「オーマイ・カット・マカロニ」や「マ・マーマカロニ」を試作しています。
ちょうどこの頃、ハンバーグなどの洋食が流行し始めたことから、それらの料理の付け合わせにマカロニが使われるようになり、日本でのパスタ消費量も増加していくことになったのです。

<参考書籍>

大矢復(2002)『 パスタの迷宮』洋泉社
大塚滋(1997)『パンと麺と日本人—小麦からの贈りもの』集英社
池上俊一 (2003)『世界の食文化 (15) イタリア』 農山漁村文化協会
石毛直道(2006)『麺の文化史』講談社学術文庫

<パスタ関連>

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