« パンと戦争 | トップページ | キムチと唐辛子と白菜 »

2006/11/06

山芋のとろろと山薬

山芋は、低温貯蔵施設が導入されるようになってから出荷量が調整されつつ年間を通して市場に出回るようになりました。
しかし、山芋がおいしくなる本来の旬は11月中旬から1月の初め頃までだといわれています。

良い山芋は切った断面の色がいかにも新鮮そうな白色をしており、外側の皮は濃い茶色になっています。
表皮がデコボコしているものよりも滑らかなものの方が良品です。
外皮が極端に白い場合は漂白が施されているかもしれないので買うのは避けた方が良いかもしれません。

            ○

里で作られる里芋に対して、山に自生する芋ということで山芋と呼ばれるようになりました。(関連:「里芋と人里」)
野生種の山芋は時間を掛けて徐々に土中深く成長します。
これを収穫するには時間と労力が必要となることから、栽培用の山芋が中国で作られたといわれています。
日本では里芋が「似倍都似毛(いえついも)」と呼ばれ、山芋が「夜万都似毛(やまついも)」と呼ばれた時代もありました。
中国では、山芋が「薯薬(じょうやく)」や「山薬(さんやく)」と呼ばれたりしましたが、これは山芋が主に薬用として用いられたためです。

            ○

山芋は「ナガイモ」「ジネンジョ」「ダイジョ」の三種に大別できます。

ナガイモの中には「長いも」「銀杏いも」「つくねいも」などの種類があります。
こららの長いもや銀杏いも、つくねいもは江戸時代になってから一般に栽培されるようになりました。

長芋を手で掘り返す場合、長芋をつくる全労力の40%は掘ることに費やされるといわれています。
現在ではトレンチャーという土掘り機がありますが、それでも掘り出しは大変な作業になるのです。

「徳利いも」とよばれるものは長いもの一種で、「伊勢いも」と「大和いも」はつくねいもの一品種になります。
しかし関東では銀杏いもを大和いもとよぶことがあるようで混乱させられます。

長いもは他の山芋より10%も水分が多くサラダにするのに向いており、大和いもは粘りが強くとろろにするのに向いています。
現在、関東では銀杏いもが主に流通しており、関西ではつくね芋が多く使われています。

山芋の中でも粘りやアクが最も強いジネンジョ(自然薯)は長さが1メートルにもなり、これを掘り出すのには経験が必要となることから最高級品の山芋として扱われています。
ジネンジョには栽培されたものや自生したものがありますが、自生したものの方が粘りは強く味は良いとされています。

            ○

平安時代の頃、山芋は高級食材の一つでした。
当時は、山芋を薄く切って煮込んだものをご飯に掛けた「芋粥」という料理が作られ、貴族など上流階級層に食べられていたのです。
当時の高官が「一度でいいから芋粥を腹一杯に食べてみたい」ともらす場面が『今昔物語』にも出てきます。

            ○

山芋を使った料理で有名なものの一つに、「真の薯(いも)」を使う料理という意味で名付けられた「真薯(しんじょ)」があります。
魚のすり身と山芋と卵白などを混ぜて、えびや鮑などの魚介を入れて蒸し上げる真薯が作られるようになったのは江戸時代中期頃だといわれています。
明治や大正時代になると真薯は流行し高級料理では必ず出すようになりました。

            ○

山芋は蕎麦に混ぜられたり蒲鉾やはんぺんなどの練り物のつなぎにも使われますが、山芋と言えばなんといっても「とろろ」ではないでしょうか。
とろろをご飯に掛けた「とろろご飯」が流行ったのも江戸時代になってからだといわれています。
山芋をすったものを「とろろ」というのは、奥州トロロ山でとれる山芋がとろろにするのには最適だったからという説があります。

            ○


このとろろを麦飯にかけた「麦とろ」やまぐろの刺身にかける「山かけ」は食べておいしいだけでなく、胃に易しい食べ方でもあります。
でんぷんを分解する酵素であり消化吸収を助ける働きがあるアミラーゼやジアスターゼが山芋に含まれているため、消化しづらい麦や刺身と一緒に山芋を食べると胃の負担が軽減されるのです。

            ○

先にも述べた通り山芋は中国で「山薬(さんやく)」ともよばれ、栄養を多く含み体力回復に効果がある食べものとして利用されました。
栄養があるということと形が似ているということからか、江戸時代の百科事典『和漢三才図絵』には山芋が鰻に変わると説明されています。(関連:「うなぎと蒲焼きの語源」)

実際に、山芋にはカリウムやビタミンB、ビタミンCなどの栄養や食物繊維が豊富に含まれています。
関東では正月にとろろを食べて家族の健康を祈ったり、家の周りにとろろをまいて蛇よけにしたようで、滋養に富んだ山芋は昔から単なる食材以上の意味を持っていたようです。

<参考書籍>

日本ベジタブル&フルーツマイスター協会(2003)『野菜のソムリエ—おいしい野菜とフルーツの見つけ方』小学館
浪川寛治三(1996)『野菜物語—たべもの探訪』一書房
高橋素子(2001)『Q&A 野菜の全疑問—八百屋さんも知らないその正体』講談社
小泉武夫(2000)『納豆の快楽』講談社

<山芋関連>

イワタニ あっとクック IOR-1 イワタニ あっとクック IOR-1

by G-Tools
野菜で、まんぷく。—蔭山はるみの体にやさしい元気メニュー 野菜で、まんぷく。—蔭山はるみの体にやさしい元気メニュー
蔭山 はるみ


by G-Tools
Coo Foo Goo セラミックおろし ZC-7206 Coo Foo Goo セラミックおろし ZC-7206

by G-Tools

|

« パンと戦争 | トップページ | キムチと唐辛子と白菜 »

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/62471/12575356

この記事へのトラックバック一覧です: 山芋のとろろと山薬:

» 太るのは夜8時以降の夕飯 [簡単レシピの朝食で、おいしくやせる方法]
なぜ痩せないの? [続きを読む]

受信: 2006/11/06 23:46

» 【もずく雑炊】−簡単食事料理−200611-F01208 [□■□■ 厳選・プロのレシピ2500 ■□■□]
トラバありがとうございます。 「厳選!プロのレシピ」=発行人梅太郎 [続きを読む]

受信: 2006/11/07 11:57

« パンと戦争 | トップページ | キムチと唐辛子と白菜 »