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2006/11/13

ごぼうと食物繊維と牛蒡料理

ごぼうの野生種とされる植物がヨーロッパやシベリア、中国の北東部などに生息しており、これらがごぼうの原種と見られています。
例えば、ヨーロッパには日本で西洋ごぼうとよばれる「サルシファイ(salsify)」(別名バラモンジン)というごぼうに似た二年草が生息しています。

            ○

日本でごぼうの野生種は見つかっていませんが、ごぼうを食べる唯一の国が日本だと言われています。
欧米でごぼうは牧場をだめにする繁殖力の強い雑草として扱われており、一般的には常食される野菜とはいえません。
第二次大戦中に日本軍の捕虜管理責任者が米兵捕虜の食事にごぼうを出したところ、戦後の戦争裁判で捕虜に木の根を食べさせた虐待行為で有罪判決を受けたという話しすらあります(ただし、しはしば語られるこの逸話が事実であるという確証は示されていないようです)。
中国でごぼうは利尿作用を促したり化膿を止める薬草として用いられましたが料理には使われませんでした(最近になって、日本への輸出用にごぼうを栽培している中国の一部の地域では徐々にごぼうが食べらるようにはなっています)。

            ○

奈良時代から平安時代初期の頃に、薬としてごぼうが中国から日本にもたらされ、後に食用野菜にされました。
中国語名の「牛蒡」を日本語読みしたことこから「ごぼう」の名がつけられています。
古くはごぼうの別名を「悪実(あくじつ)」ともいいました。
これはごぼうの花の外側につく咢(がく)に鉤針状のトゲがあり、これが衣服に付着し易いことから名付けられたものです。

            ○

ごぼうは殆ど栄養を含んでおらず、消化もされずに胃腸を通り過ぎてしまいます。
しかし、ごぼうに含まれる食物繊維には多くの効能があるのです。
ごぼうは食物繊維の固まりのような野菜で、白米や肉に比べて20〜30倍もの水分を吸収することができ、水分を含んで膨らんだごぼうが腸を通過するときに腸内を清掃してくれると同時に腸を刺激して腸の活動を促すため、便秘を予防したり改善する働きがあります。
また、ごぼうの食物繊維が含む水分が腸内の毒素を薄めてくれたり、人体に有害な細菌が食物繊維に吸着して体外に排泄される効果も期待できます。
逆に、人体に有益な腸内細菌であるビフィズス菌などにとっては食物繊維が増殖の場となり、それらの腸内細菌により生合成されるビタミンによって免疫力が高められることになります。
また、食物繊維が胆汁酸の分泌を促すことから脂肪やコレステロールの増加が抑えられることも知られており、食物繊維によって腸内での糖分の吸収速度が遅められるため、血糖値の急激な上昇が抑制されることで糖尿病予防になるともいわれているのです。
ごぼう自体に栄養がなくても、体内で栄養を作り出す機能や整腸作用の手助けをごぼうはしているわけです。

            ○

ところで、ごぼうには大きく分けて長根種と太根種があります。
細長い長根種の原種は江戸時代に滝野川村(現在の東京都北区滝野川)で品種改良してつくられた「滝野川ごぼう」だといわれています。
滝野川ごぼうは柔らかく空洞部分が少ないことから人気を得て多くつくられるようになりました。

太根種で有名なものに「堀川ごぼう」があります。
豊臣秀吉が建造した聚楽第が解体され移築された時、その掘りも埋められましたが、後の時代にその場所でごぼうが栽培されました。
掘りの跡地で栽培されたごぼうということで堀川ごぼうの名が付けられたといわれています。

実は堀川ごぼうは滝野川ごぼうと同品種なのですが、栽培方法の違いから滝野川ごぼうが細長くなるのに対して堀川ごぼうは芋のように太く短く育つようになりました。
関東ではローム層とよばれる火山灰土があるため、関東の畑で滝野川ごぼうは細く真直ぐに成長することが可能です。
しかし関西では粘土質や浅い耕土が多いため、苗床で40〜50センチまで育てられた滝野川ごぼうが、根の先端を切られてから畑に斜めに浅く植えられるようになり、根の先が伸びずに横に大きく成長する堀川ごぼうが誕生することになったのです。滝野川ごぼうとは異なり堀川ごぼうは樹木の根のように太く皮が厚くて中心には空洞があり、独特の香りと柔らかい歯ごたえが楽しめます。

堀川ごぼうのように太い種類のごぼうに千葉県特産の大浦ごぼうという品種があります。
しかし大浦ごぼうは滝野川ごぼうから作られたものではなく、1000年前には栽培され始めていた滝野川ごぼうとは別品種のものです。

            ○

日本人は様々な品種のごぼうを作り出しただけでなく、色々なごぼう料理も開発してきました。
例えば、ごぼうの皮近くに多く含まれる旨味を活かすために工夫が施された「叩きごぼう」という料理があります。
叩いて粗く砕いた茹でごぼうをすり胡麻と醤油を合わせたものに絡めた叩きごぼうは室町時代にはつくられていた料理だという説があります。

ごぼうとどじょうを一緒に煮込む「柳川」という料理があります。
柳川料理は江戸時代につくられるようになったといわれており、この料理をつくった店の屋号が「柳川」だったことからこの名が付けられたといわれています。
福岡県柳川でつくられた土鍋を使ってつくられたため柳川と名付けられたという説もあるようです。

どじょうではなくうなぎを使ったものに「八幡巻き」という料理があります。
周囲が30センチになることもある太いごぼうが江戸時代の京都の八幡でつくられました。
八幡でつくられたごぼうを京都では八幡と呼ぶようになり、この八幡をうなぎで巻いてつくられる料理が「八幡巻き」と名付けられたといわれています。

家庭でもよく作られるごぼう料理に金平牛蒡(きんぴらごぼう)があります。
金平とは坂田金時の息子の金平のことですが、この金平は江戸時代の人形浄瑠璃「金平浄瑠璃」の登場人物であり実在した人ではありません。

強さの代名詞が金平だったことから、当時にしては味も歯ごたえも強い感じのするごぼう料理に金平

牛蒡の名が付けられたといわれています。

11月から1月にかけてがごぼうの旬です。
これからどんどん寒くなっていきますが、旬のごぼうを入れた豚汁なんかも増々おいしく感じられる季節がやってきますね。

<参考書籍>

高橋素子(2001)『Q&A 野菜の全疑問—八百屋さんも知らないその正体』講談社
大場秀章(2004)『サラダ野菜の植物史 新潮選書』新潮社
日本ベジタブル&フルーツマイスター協会(2003)『野菜のソムリエ—おいしい野菜とフルーツの見つけ方』小学館
浪川寛治三(1996)『野菜物語—たべもの探訪』一書房
小泉武夫(2005)『 小泉武夫 食のワンダーランド』日本経済新聞社
木村茂光(1996)『ハタケと日本人—もう一つの農耕文化』中央公論社

<ごぼう関連>

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