落花生は落ちる花に実が生るのか
英語で「peanut(ピーナット)」といい、スペイン語では「cacahuete(カカウェーテ)」とよばれる落花生はアメリカ大陸で栽培が始まったと考えられており、ブラジルや西インド諸島などが原産地の候補としてあげられていますが、最初に落花生が作られた地域は明らかにされていません。
しかし、4500年前のものと見られる数千個の落花生の殻がペルーの遺跡から出土しており、落花生栽培の歴史が古くに始まっていたことは確かです。
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14〜15世紀にメキシコ中央高原で栄えたアステカの人々が、落花生を食用ではなく解熱剤として用いていたことが分かっていますが、これよりもだいぶ前の紀元前500年にはメキシコに落花生が伝わっていたといわれています。
紀元100〜800年頃につくられたペルーのモチェ族の墓からは落花生の殻の形が装飾された陶器が発見されており、もう少し後の時代のものになりますが、インカ族の墓からは副葬品として埋葬された落花生の痕跡が見つかっていることなどから、昔から南アメリカで落花生は生活に密着した重要な作物として扱われていたと考えられているのです。
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16世紀頃にヨーロッパ人が南米大陸で初めて落花生を見たとき、彼らは落花生をアーモンドのようなものではないかとか、コーヒー豆のように煎って使うものなのではないかと考えましたが、落花生を積極的に食べようとはしませんでした。
17世紀前半にペルーに住んだスペイン人祭司のベルナベ・コボは落花生を食べると頭痛がしたり目眩を覚えると記録しています。
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16世紀前半に、
スペイン人やポルトガル人が南アメリカに攻め入ったときに知った落花生を故国に持ち帰りましたが、やはりこの時代のヨーロッパ本土でも落花生が熱狂的に迎え入れられるということはありませんでした。
ヨーロッパ人から見て、地上に花をつけるのに地中に実ができる落花生は奇怪な植物に感じられたのです。
落花生が好む温暖な気候の土地がヨーロッパには少なかったということも落花生が普及しなかった理由の一つとしてあげられます。
その後の状況から見て、ヨーロッパでは落花生をそのまま食べたり料理に使ったりするより、油にして使うことの方が注目されたことが伺えます。
加熱しても酸化し難い落花生油は特にフランスで重宝され、落花生油を使った様々なフランス料理が考案されたのです。
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アフリカやアジアでも無臭の落花生油は揚げ物には欠かせないものになりましたが、これらの地域では落花生そのものを料理に積極的に用いました。
1500年代に、インド南部に落花生を持ち込んだのはポルトガル人でしたが、その他のアジア地域への落花生の伝播に貢献したのはスペイン人だったと考えられています。
スペイン人が南アメリカからフィリピンに運んだ落花生は、フィリピンから中国や日本、東インド諸島に伝わっていったのです。
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東南アジアでは挽き割りにした落花生をとうがらしやライムと混ぜて辛味のあるソースが作られたり、タイやインドネシア、マレーシアなどで食べられる焼き鳥風料理のサテーにはピーナッツのソースがかけられます。
日本でも沖縄には落花生から作られる「ジーマミー豆腐」という珍味があります。
「ジーマミー」とは「地豆」のことで落花生を意味する沖縄の言葉です。
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「落花生」や沖縄の「ジーマミー」という名の語源は、落花生の特徴的な実のなり方に由来しています。
落花生は地面に近い枝に花をつけ、花が咲いて受粉すると花の雌しべの基部にあって袋状の形をした「子房」と呼ばれる部分が根のように地面に向かって伸び始めます。
伸びた子房の先端が地面につくと、子房は地表から3センチ以上も地中にもぐり込み、そこで繭(まゆ)の様な形に膨れて落花生の莢となる部分を形づくり、莢の内部では実となる部分がつくられるのです。
花が咲いてから約2ヶ月ほどで落花生の実はできあがりますが、日光があたっている状態で子房は熟すことができないため、子房が地中にもぐり込むことができない固い地面の土地で落花生は実を生らせることができません。
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このように、実際には花ではなく子房が地中にもぐり込むのですが、まるで花が落ちた場所に実ができるように見えることから、中国語ではこの豆を「落花生(ローホワション)」と呼ぶようになったのです。
「落花生」という語句が中国から日本に伝わったとき、中国語の漢字表記はそのまま使われましたが、これを訓読みするようになり、日本では「らっかせい」と呼ぶようになりました。
日本語では落花生に南京豆という別名がありますが、これは中国から伝来した豆を意味しています。
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落花生が日本に伝わったのは18世紀初め頃で、オランダ船によりもたらされたというのが定説になっています。
地上で花が咲き地中で実がなる不思議さから当時の日本でも落花生は敬遠され、すぐには普及しませんでした。
明治7(1874)年にアメリカから落花生の種子が日本に持ち込まれるようになった頃から、落花生は日本各地で栽培されるようになります。
落花生栽培には程よい湿り気と酸素が必要となるため水はけの良い砂地などでの栽培が適しており、千葉県九十九里浜で落花生の生産は活発に行われました。
現在でも千葉県は日本一の落花生生産量を誇り、日本で生産される落花生の7割以上は千葉県で作られているのです。
<参考書籍>
安達巌(2004)『日本型食生活の歴史』新泉社
シルヴィア・ジョンソン(1999)『世界を変えた野菜読本—トマト、ジャガイモ、トウモロコシ、トウガラシ』晶文社
吉田よし子(2000)『マメな豆の話—世界の豆食文化をたずねて』平凡社
本間千枝子, 有賀夏紀(2004)『世界の食文化〈12〉アメリカ』農山漁村文化協会
<落花生関連>
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