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2006/10/06

蕎麦になるソバの実

ソバは種を蒔いてから収穫できるまでに約75日掛かります。
春に種が蒔かれたものは夏に収穫され、夏に種を蒔いたものは秋ソバとして秋に収穫されます。

ソバはタデ科植物です。
涼しい気候で育ち、気温だけで見るならばヒマラヤの標高4300メートル地点などでも生育することが可能です。
貧土や非常に乾燥した環境でも育ち、病気や害虫の被害が少ないという栽培する上での利点があります。
しかも、ソバの葉は成長が速く地表に射す日光を遮り、ソバの根からは他の植物の生育を妨げる物質が分泌されるため、ソバ畑の地表には雑草が生え難くなるということもソバ栽培に手間が掛からない理由の一つになっています。

栽培するには良いこと尽くめに聞こえますが、ソバが実をつけるには主に蜜蜂などの虫による受粉が必要になるため、花が咲いても結実するのは20〜30%程度で、収穫できる実が少ないということがこの栽培植物の欠点といわれています。

            ○

3005000066 ソバの原産地はシベリアからインドにかけての東アジアといわれており、中国南部から北部に伝わったものが朝鮮半島を経由して日本に伝播したとする説が有力視されています。

縄文時代前期の遺跡からソバの種子や花粉が発見されていることから、紀元前4000年よりも前にソバ栽培は始められていたという説があります。
日本では野生種や自生するソバが発見されていないため、栽培用のソバが縄文時代に日本に持ち込まれたのだと考えられているのです。
出土した中で最も古いソバの種子は北海道渡島のハマナス遺跡から発見されたもので、その他にも全国の十数ヶ所の遺跡でソバの花粉や種子が出土しています。

しかし、縄文時代や弥生時代の遺跡から出土したソバの実は後の時代に混じった可能性も否定できず、証明が可能な範囲でソバ栽培が確実に行われていたといえるのは5世紀頃とされています。
『古事記』や『日本書紀』、『万葉集』にソバという言葉が出てこないことから、これらの文献が編集された時代よりも後に栽培が始まったとする説もあるのです。

            ○

ソバの古語の「ソバムギ」がソバの語源だとされており、ソバムギとよばれていたものが縮められて単に「ソバ」と呼ばれるようになったといわれています。
「ソバムギ」の「ソバ」とは「稜(そば)」と書き、「稜」とは物の角を意味します。
ソバの葉は三角で実も三角錐の形をしていることから、角のある麦という意味で「ソバムギ」とよばれたのです。

            ○

ソバが最初に文献に登場するのは722年に元正天皇が出した詔で、米の凶作に備えて晩稲、ソバ、大麦、小麦を植えよと命じたものです。
その次にソバが出てくる記録は839年に任明天皇が畿内でソバを栽培せよとした詔でした。
当時ソバといえば非常食であり日常的に食べるものではなかったのか、任明天皇の命令書が出された後は、飢饉が多発した平安末期になるまでソバは文献に現れなくなります。

            ○

ところで、ソバは五色といいます。
これは、ソバの根は茶色で茎は赤、葉は緑、実は黒、そして実の中身は白いという意味です。
麺の蕎麦のおいしさを決める要素の殆どはソバ粉の質だといわれ、そのソバ粉の原料となるのが外皮に包まれた実の中身の白い部分です。

            ○

ソバの実の外皮を取り除くことを「抜きにする」といいます。
外皮だけを取り除き中身の白い部分がきれいに取り出されたものは「丸抜き」とよばれ、中の実が2〜3つに割れているものは「上割れ」、更に細かく割れているものは「小割れ」といいます。

昔は「抜き臼」というソバの外皮を取り除く専用の石臼がありましたが、現在では高速回転するベルトにソバの実を打ちつけて外皮をとる機械が使われるのが普通です。
臼で外皮を取り除く場合は皮だけが取れずに実が砕けてしまうものが全体の七割にもなりますが、機械で皮を取る方法では、皮が取られて実が割れない、いわゆる丸抜きとよばれる状態の実が九割になります。

            ○

ソバの外皮を完全に取り除くほど、麺にしたときの色は白くなります。
抜き臼を使ったときに上割れや小割れ状態になってしまった実は再び臼で挽かれることで粉にされ、その時に外皮は殆ど取り除かれますが、粉となった外皮はそば粉に混じってしまうため、蕎麦の出来上がりは黒っぽくなります。
また、蕎麦の色はつなぎで入れる小麦粉の量にも左右され、ソバ粉に混ぜる小麦粉の量が多ければ多いほど、できあがる蕎麦の色は白くなります。

ソバの外皮は繊維質で消化に悪く、味を良くする成分を含んでいません。
黒みがかった蕎麦の方がおいしいという話しもありますが、ソバの外皮が混じったことで麺の蕎麦の色が黒っぽくなっている場合もあり、一概に色だけで蕎麦のおいしさが決まるとは言えないようです。

<参考書籍>
俣野敏子(2002)『そば学大全—日本と世界のソバ食文化』平凡新書
木村茂光(1996)『ハタケと日本人—もう一つの農耕文化』中央公論社
大塚滋(1997)『パンと麺と日本人—小麦からの贈りもの』集英社
浪川寛治三(1996)『野菜物語—たべもの探訪』一書房
月刊食生活編集部(1992)『グルメのおもしろ語源集—食べものふしぎ博物館』コア出版

<蕎麦関連>

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