« ザウアークラウトの作り方 | トップページ | 椎茸栽培とビタミンD »

2006/09/12

里芋と人里

里芋には糖質とタンパク質が結びついた糖タンパク質の一種であるムチンや食物繊維のガラクタンが含まれており、これらが里芋の粘りのもとになっています。
里芋の皮をむいてすぐに煮ると吹きこぼれてしまうのは、煮汁の中でこれらの粘りのもとになる物質が出てきて泡立つためです。

里芋を煮るときは、吹きこぼれを防ぐために2〜3分ほど下茹でをしてから水で洗って里芋表面の粘りを出す物質を取り除く準備が必要になります。
里芋の粘りの素になる物質は塩に溶ける性質があるので、煮る前に里芋を塩でもむか、下茹でする時に塩を入れることで里芋の粘りを抑えることもできます。

            ○

下ゆでなど余計に一手間が必要になるせいなのか、里芋のネバネバに含まれる強いアクが皮膚などに付くと痒くなったりするせいなのか、最近の里芋はジャガイモなど他の芋に人気を奪われてしまっています。
しかし、日本人の里芋食の歴史は非常に長く、稲作が盛んに行われる以前の縄文時代でも里芋の栽培は行われていたと考えられているほどです。

            ○

里芋は熱帯地方で栽培され始めたタロイモの一種で(関連:「タロイモ・ヤムイモが渡った南の海」)、タロイモの仲間の中では最も北緯が高い場所で栽培されています。

古代の日本人が最初に集落をつくって生活を始めた土地は日照条件が良く、水辺が近くにあるような場所だったはずだと考えられています。
そのような土地はタロイモが好む土地でもありました。
そのためタロイモは自然と人が住む「里」近くで作られるようになったと考えられており、山にできる芋の山芋に対して里で作られる芋なので里芋と呼ばれるようになったのが名前の由来であろうといわれています。(関連:「山芋のとろろと山薬」)

             ○

ところで、京都の伝統野菜に「えびいも」という芋があります。
えびいもは里芋と別種の芋というわけではなく、「唐芋(とうのいも)」という種類の里芋を特別な方法で栽培することで、エビのような縞柄の皮とエビのような反り返った形状がつくられる里芋の一種です。

1700年代後半に京都祇園の「いもぼう平野家」の初代当主の平野権太夫が、長崎から京都に運ばれた唐芋を引き受け、これを丁寧に栽培したところ海老のような芋ができたことからえびいもの名が付けられたといわれています。
えびいもを栽培するには4月頃に種芋が植えられ、5月からは「土寄せ」と呼ばれる作業が行われます。
「土寄せ」は毎月少しづつ土を載せていく作業で、8月までには40センチ程度の土が入れられます。
徐々に加えられる土の重さで芋がエビのように反り返り、皮には縞模様ができるのだそうです。
もともとは京都の南部で栽培されていましたが最近は北部でも栽培されています。

えびいもは通常の里芋よりも粘りが強く煮込んでも形が崩れません。
えびいもを使った料理に、棒ダラの甘辛煮と一緒に煮る「芋棒」という京都料理があります。

            ○

2006年9月3日付けの『Yomiuri Online』に、山形市の馬見ヶ崎川河川敷で、3トンの里芋と6トンの水、1.2トンの牛肉を材料として、2台のショベルカーと100人のスタッフを動員して、3万食の芋煮汁を作る芋煮会が催されたという記事がありました。

このような大規模なものは特別ですが、秋になると東北地方では里芋を使った芋煮会があちらこちらで行われます。
里芋が穫れる時期が米の収穫時期と重なることから、東北の芋煮会には収穫祭の意味あいもあるようです。
それに加えて、稲の品種改良が行われる以前は米を安定的に収穫することは難しく、米が足りなくなったときに東北地方の食を里芋が支えたという歴史があることから、東北の人達にとっての芋煮会は食糧確保がままならなかった昔を偲ぶという面もあるといいます。

群馬県で里芋は「陰の俵」とよばれ、九州では「食芋(けいも)」と呼ばれたりもしており、これら里芋の別名は里芋が準主食扱いされていた時代の名残だと考えられています。

            ○

以前は八月の十五夜には枝豆と里芋を食べ、九月の十三夜には皮付きの里芋と栗を食べる習慣があり、今でも地方によっては十五夜に里芋が茹でられたりするようです。
正月には雑煮の中に里芋を入れるという習慣が多くの地域で見られ、正月三箇日は餅の代わりに里芋を食べるという地方すらあります。
このように日本の祭事に使われてきたことからも分かるように、里芋は日本人にとって特別な食べものとして扱われてきたのです。

<参考書籍>
高橋素子(2001)『Q&A 野菜の全疑問—八百屋さんも知らないその正体』講談社
NHK取材班(1990)『人間は何を食べてきたか 麺. イモ, 茶 』日本放送出版協会
小泉武夫(2000)『納豆の快楽』講談社
タキイ種苗株式会社出版部(2002)『都道府県別地方野菜大全』農山漁村文化協会

<芋煮会関連>

YAMAZEN パワーダッチオーブン12 PWD-12 YAMAZEN パワーダッチオーブン12 PWD-12

by G-Tools
アウトドアクッキング大事典—焚き火・鉄板・網焼き・ダッチオーブン・鍋で豪快に作る アウトドアクッキング大事典—焚き火・鉄板・網焼き・ダッチオーブン・鍋で豪快に作る
太田 潤

by G-Tools
ダッチオーブン・パーフェクト・ブック—これさえあればなんでもできる ダッチオーブン・パーフェクト・ブック—これさえあればなんでもできる
中山 千賀子

by G-Tools

|

« ザウアークラウトの作り方 | トップページ | 椎茸栽培とビタミンD »

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/62471/12035667

この記事へのトラックバック一覧です: 里芋と人里:

« ザウアークラウトの作り方 | トップページ | 椎茸栽培とビタミンD »