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2006/09/22

しょうがの甘酢漬け

しょうがには自律神経を刺激してアドレナリンの分泌を促す成分が含まれており、これにより血管が広がり血行がよくなるといわれています。
風邪をひいたときに、おろしたしょうがを熱いお湯で溶いて飲むという民間療法があるのも、しょうがを摂ることで血行が良くなり体が温められて新陳代謝が促進されるからです。
インドでは刻んだしょうがを蜂蜜に漬けたものを風邪をひいて喉が痛いときに食べるそうです。

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しょうがには殺菌作用もあります。
このことも昔から知られていたようで、毒薬で暗殺されることを恐れたローマ皇帝ネロがつくらせた解毒剤にはしょうがも含まれていたといわれており、中世のヨーロッパでペストが大流行した時もしょうがはペスト予防になると信じられていました(実際に強力な毒やペストに対して、しょうががどれほどの効果を発揮するのかは定かではありません)。

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更にしょうがには消化酵素のジアスターゼの作用を促進する成分が含まれているため消化を助ける働きもします。
しょうがに殺菌や消化促進作用があることを日本人は経験的に知っていたのか、生魚をつかう寿司にしょうがの甘酢漬け(ガリ)がつけられたり、殆ど作り方は同じですが「はじかみ」とよばれる葉しょうがや谷中しょうがの甘酢漬けが焼魚の付け合わせに添えられます。(関連:「酢漬けいろいろ」)

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「はじかみ」とはもともと日本の古い言葉では辛味のある植物を指していました。
山椒(さんしょう)も「はじかみ」と呼ばれていたのです。
中国から日本にしょうがが伝わったとき、山椒と同様にしょうがには辛味があったので、中国の呉(くれ)の国から伝来した辛い植物という意味で「呉(くれ)のはじかみ」とよばれたり、土の中で育つ部分が利用されるので「土ハジカミ」とよばれたりしました。
そのしょうがの古い呼び名の名残なのか、現在は葉しょうがなどの甘酢漬けが「はじかみ」と呼ばれています。

            ○

はじかみといえば、はじかみが徳川幕府の人事に影響を与えたことがあるという話しがあります。

江戸時代に、今の東京の板橋一帯は将軍への献上用しょうがの栽培地に指定され、ここで収穫されたしょうがが将軍家に納められて、将軍が食べる料理にもしょうがはしばしば使われていました。

十一代代将軍家慶のとき、老中の水野越前守忠邦が財政再建のための緊縮財政策を強行し、庶民からはやり過ぎだという批判が出た贅沢禁止令を発布しました。
ある日、家慶の食事に鯛の塩焼きが出されたとき、いつもは鯛に付けられていたはじかみが添えられていませんでした。
そこでその理由を家慶が問うと、老中水野が出した贅沢禁止令のためだという答えが側近から返ってきました。
それを聞いた家慶は思わず「まさかそこまでやっているとは思わなかった」とついつぶやいてしまったのです。
この将軍のポロリ一言が引き金となって水野忠邦は老中の座から降ろされることになったといわれています。

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老中を失脚させる原因となったはじかみの作り方を書いておきます。
葉しょうがや谷中しょうがを10〜12本用意し、まずはそれらの根の部分を塩を少し入れた熱湯で十数秒ほど茹で、その後茎の部分も含めた全体をザブッと熱湯の中に4〜5秒間浸けてからしょうがをひきあげます。
お湯からあげたしょうがには塩をパラパラとふりかけて冷ましておきます。
しょうがを冷ましている間に、半カップ(100cc)の酢にその酢の量の八割程度の水を加え、ここに大さじ3の砂糖(40グラム程度)を入れて混ぜたものを加熱して一煮立ちさせ冷まします。
細長のビンにしょうがを入れ、そこに冷ましておいた甘酢を注ぎ入れ、3時間程度置いておけば出来上がりです。

ついでに新しょうがの甘酢漬け(ガリ)の作り方ですが、こちらはまず新しょうがを薄くスライスします。
スライスしたしょうがを水で洗って、水気をよくきってから塩をふります。
塩をふると水が出てきますので、これを手で搾るとしょうがは面白いように縮まりクタッとなってしまいます。
新しょうがを漬ける甘酢は、半カップの酢に大さじ2の水と大さじ2の砂糖、小さじ1の塩を混ぜてつくります。
やはりこれを一煮立ちさせた後に冷まして、先ほどのしょうがのスライスを入れた容器に注ぎ入れます。
しばらくすると新しょうがはピンク色に変わっていきますが、食べるのには一晩以上は付けておいた方が良いようです。

<参考書籍>
高橋素子(2001)『Q&A 野菜の全疑問—八百屋さんも知らないその正体』講談社
井上宏生(2002)『スパイス物語—大航海からカレーまで』集英社
吉田よし子(1988)『香辛料の民族学—カレーの木とワサビの木』中央公論社
大山真人 (2001)『銀座木村屋あんパン物語』平凡社
旅の文化研究所(2000)『落語にみる江戸の食文化』河出書房新社

<はじかみ関連>

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