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2006/09/08

マグロの血合は伊達じゃない

日本近海に生息するマグロは5〜7月頃にフィリピン沖や沖縄の八重山列島沖で卵を産みます。
意外にもあの巨大な魚から生まれる卵は直径が約1ミリです。
卵から孵って2ヶ月もすると10センチ程度の大きさに成長し、1年後の体長は50センチ程度になり体重は3キロにまで増えます。

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日本近海のマグロは3月頃に沖縄近くの海から北上を始め、Map_bonito その後九州の南まで来ると、太平洋の黒潮にのって北へ向かうグループと日本海側の対馬海流にのって移動するグループに分かれます。 太平洋側のグループは春から夏にかけて高知や紀州、房総沖近辺を泳ぎ、日本海側グループは同じ時期に富山や佐渡沖辺りを北上しています。 冬になると太平洋側グループも日本海側グループも本州と北海道の間の津軽海峡に達します。

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津軽海峡に面する青森県大間近くの海底には溝があり、この溝をマグロの大群が通り道にしていることから大間ではマグロ漁が盛んに行われています。
70〜80年代には大間にマグロがやって来なくなり、大間でのマグロの水揚げは一時的に殆ど無くなったこともありましたが、90年代以降、マグロは大間近くを再び回遊するようになりました。
この近辺で獲れるマグロの肉は良質でマグロ本来の味が楽しめるとして、近海物のクロマグロといえば大間と言われるくらいに特別扱いされています。

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以前は北海道の余市や礼文でもマグロが水揚げされましたが、現在は獲れなくなってしまったようです。
1980年代に造られた青函トンネルや、1993年に起きたマグニチュード7.8の北海道南西沖地震が、北海道にまで回遊していたマグロのコースに影響を与えたためにマグロが北海道に来なくなったのではないかと噂されましたが、本当の原因は分かっていません。

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日本の南の海で生まれたマグロは、2〜3年間は太平洋ルートか日本海ルートを南北に回遊しますが、その後太平洋を東に渡り、アメリカのカルフォルニア沖に移動します。
3〜4年の間カルフォルニア沖にいて成魚になると、マグロはまた日本の近海に戻ってきて回遊します。
そのように回遊を続けるマグロの寿命は短いもので5〜6年、長いもので15年程度といわれています。

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マグロは通常時速60キロ程度で泳いでおり、最速で時速160キロまでスピードを出します。
しかもマグロは昼夜に関係なく泳ぎ続け、眠っている間はスピードを落としますが眠りながらも泳ぐことを止めません。
これはマグロが推進することでエラに海水を送り込み、海水中の酸素を体内に吸収し続けなければならないからです。
エラ近くには薄い膜をもつ動脈があり、この薄膜を通じて海水中の酸素を体内に取り入れます。
マグロが高速で泳いでいる最中に網にかかったりすると、吸収する酸素が減り、血中の酸素量が急激に低下するため直ぐに死んでしまいます。

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この酸素を取り込む仕組みとも関係していますが、マグロの体温は高く保たれ、海域によってはマグロの体温の方が海水温よりも数十℃も高くなる場合すらあります。Bonito_blad
マグロは時速60キロ以上の高速で長距離を泳ぐため、酸素吸収を行う動脈から海水によって熱が奪われ、動脈中の血液の温度は下がります。
この動脈は体の側面の皮の下を静脈と平行するように走っています。
これら動脈と静脈からは毛細血管が体の中心に向かって網目状に伸びており、海水で冷やされた低温の血が流れる動脈の毛細血管と、体から発せられる熱で温められた血が流れる静脈の毛細血管が絡み合うように並んでいることから、動脈と静脈の間で熱交換が行われ、マグロの体内温度は一定に保たれるようになっているのです。
背中側の肉と腹側の肉の間にあるこれら毛細血管の集まりがマグロの血合とよばれる部分です。

マグロの筋肉の温度が10℃上昇すると、その筋肉が生み出すパワーは3倍になることが分かっています。
この静脈と動脈の間で行われる熱交換の仕組みにより体の中心部の温度が高く保たれ、マグロの筋肉は広大な太平洋を泳ぎきるためのパワーを生み出すことができるのです。

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マグロが延縄の針などに掛かって逃げようとして長時間暴れ回ったりすると、体温は上昇するのにエラに入る海水が冷却の役目を果たさなくなるため、体内に溜った熱によって身が焼けてしまい、肉がバサバサになって味が落ちるといわれています。
特にキハダマグロの暴れ方は激しいそうです。
また、暴れることで筋肉中の乳酸が増えて味が落ちるとも言われており、延縄で獲れたマグロを使いたがらない料理人もいるといいます。

<参考書籍>
高橋素子(2003)『Q&A 食べる魚の全疑問—魚屋さんもビックリその正体』講談社
上田武司(2003) 『魚河岸マグロ経済学』集英社
岩井保 (2002)『魚河岸マグロ経済学』岩波書店

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