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2006/09/15

秋刀魚で按摩いらず

秋刀魚(さんま)はもともと「狭真魚(さまな)」とよばれていました。
「狭真魚」とは体の幅が狭い立派な魚という意味で、これが転じて「さんま」になったといわれています。

さんまを「秋刀魚」とかくのは形が刀に似ているからですが、市場などではさんまのことを「九寸五分(くすんごぶ)」とよびます。
九寸五分は短刀のことを指します。

関西や高知、九州の一部などで秋刀魚は「サイラ」と呼ばれます。
関西でも京都では「サヨラ」、富山や石川、和歌山では「サヨリ」、三重では「カド」、佐渡では「バンジョ」の別名があります。

            ○Map_samma2_1

2006年9月3日付け『asahi.com』の「サンマの中枢 港区赤坂」という記事によれば、 秋刀魚は極端に暑かったり寒かったりする海域を除く北太平洋全域に生息しており、370億匹以上の秋刀魚が回遊していると推測されているそうです。 以前は、サンマが卵を生む場所は西日本近海からその沖の黒潮の東側までだと考えられていましたが、実は黒潮の北の海域やアメリカ西海岸沖までもが産卵場所になっているということが分かってきたようです。 産卵時期についても、以前は冬期にだけ産卵があると考えられていましたが、秋や春にも卵が産みつけられることが最近になって判明するなど、日本人にとっては身近な秋刀魚ですが生態にはまだ不明な点が多いようです。

            ○

秋刀魚は卵を藻や海藻に付着するように産みつけます。
日本近海を回遊する秋刀魚の多くは9月末頃に卵から孵り、その稚魚達は北海道沖合の北方四島よりも更に北のプランクトンが豊富な海域を目指して北上します。
稚魚が北上を終えるのは孵化からほぼ1年後と考えられており、このときの体長は20センチ程度になっています。
北の海で栄養をとり成長した秋刀魚は産卵のために8月末頃から10月頃にかけて南へ移動します。
移動を始めた早い時期に北海道で獲られる秋刀魚は「お迎えさんま」と呼ばれ、この頃の秋刀魚はサイズがまだ小さく脂はさほどのっていません。
秋刀魚の親は移動の途中で卵を産みつけます。
10月までに三陸や房州、遠州灘沖まで秋刀魚は南下しており、この頃には体全体の20%以上が脂肪となり、いわゆる脂がとてものった状態になります。
秋刀魚の脂は産卵後には落ちてしまい身はパサパサとした感じになってしまいます。
この産卵後の秋刀魚は別名「麦さんま」といいます。
秋刀魚漁は8月末に解禁され12月まで漁が行われます。
冬から春先に掛けて、秋刀魚は四国や九州の沿岸近くを泳いでいますが、中には稀に沖縄沖まで南下してしまうものもいるようです。

            ○

秋刀魚の下あごは突き出ており、この部分を「吻(ふん)」といいます。
吻が黄色い秋刀魚の身には脂肪が多くついています。
また、雄よりも雌の方が味は良いともいわれます。
背が青黒くつやのあるものは鮮度が良く、30センチ以上のものは大抵どれも脂がのっています。
秋刀魚のサイズが本来はまだ小さい時期であるはずの初秋に、大きな秋刀魚が店頭に並べられることがありますが、これは前年に獲られて冷凍にされていたものです。
9〜10月の旬の時期でも、今年獲られた秋刀魚に前年の冷凍物を混ぜて販売する店もあるという噂もあります。
ただし今の冷凍技術のレベルは高いので、冷凍物だからといって極端に味が落ちるわけではありません。

            ○

秋刀魚はハラワタが美味しいとされてきましたが、昔に比べて今の秋刀魚のハラワタの味は落ちたとも言われています。
これは秋刀魚漁の漁法に関係しています。
戦前は秋刀魚の通り道に網を張っておいて網に刺さったものを獲る刺し網が主に用いられましたが、戦後は大きな網で大量の秋刀魚をすくい獲る棒受網(ぼううけあみ)漁法が主流となりました。

刺し網漁をしていたときよりも棒受網漁に変わってから漁獲量は20倍に増えましたが、棒受網漁では網の中で秋刀魚同士がぶつかり合ってウロコが落ち、水中に舞うウロコを秋刀魚が飲み込んでしまうため、秋刀魚のハラワタの味が落ちると言われています。
また、秋刀魚はウロコが残っていれば新鮮だとされていましたが、最近の棒網を使う漁ではウロコが剥がれ落ちるのは珍しいことではないので、ウロコがないからといって鮮度が落ちているとは言い切れなくなっています。

            ○

秋刀魚が刺身にされたり江戸前寿司で出されるようになったのは最近のことのようですが、紀州地方には「さんま寿司」という伝統料理があります。
旬を過ぎたいわゆる「麦さんま」とよばれる産卵後の脂の少ない秋刀魚を使ってさんま寿司はつくられ、紀州地方では正月料理の一つとして食べられてもいます。

            ○

040901029 一般的にさんま料理といえば塩焼きですが、最近のマンションなどではモウモウと煙を出すような焼魚料理はできないところもあると聞きます。
そのような場合はアルミホイルで包んで蒸し焼きのようにするか、フライパンと蓋を使ってなるべく煙が出ないように焼くこともできます。

秋刀魚の和風ムニエルというのも美味しいものです。
これは『旬菜和食―和の新しい味わい』というレシピ本にのっていた秋刀魚料理の一つです。
秋刀魚の頭とハラワタを取り除き、水で洗ってから腹を開いて中骨や腹骨を取り除きます。
一匹を3等分くらいの大きさにして身を開いてから塩こしょうをふり、小麦粉を薄く付けて、多めの熱い油をしいたフライパンで焼くだけです。
薬味としてねぎや茗荷(みょうが)やしそなどを焼き上げた秋刀魚の上にたっぷりとのせ、ポン酢につけるなり上から掛けるなりして食べます。

さんまを味噌汁にすることもできます。
秋刀魚の頭と尾、ハラワタを取り除き、塩をふってから暫く放置した後に洗ってから輪切りのように切ります。
それを味噌汁の具として入れるのです。Sanma
魚臭さを消すためにしょうがを入れると良いですし、だいこんなどの野菜を一緒に入れても合うようです。

            ○

秋刀魚に含まれる栄養は豊富なことで有名です。
秋刀魚の身には牛肉と同量のタンパク質がある上にビタミン類は牛肉よりも多く含んでいます。
秋刀魚の血合には豚レバーと同等の鉄分が含まれ、皮や腹ワタにもDHAやタウリン、EPAなどが含まれています。
「秋刀魚が出回ると按摩が引っ込む」というほどですから、美味しいだけでなく体にも良い魚なのです。

<参考書籍>
マルハ広報室(2000)『お魚の常識非常識「なるほどふーん」雑学』講談社
高橋素子(2003)『Q&A 食べる魚の全疑問—魚屋さんもビックリその正体』講談社
セマーナ(2002)『スーパーで買える魚図鑑—これであなたもサカナ通!』日本文芸社
講談社(2002)『カラー完全版 魚の目利き食通事典 』講談社

<さんま関連>

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