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2006/09/20

さつまいも太古の海を渡る

意外なことにさつまいもは謎の多い植物です。
特にさつまいもの原産地とさつまいもがどのように世界に広まっていったかについては、近年になるまで確かなことは殆ど何も分かっていませんでした。

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さつまいもの研究を難しくしたのは、さつまいもの種類の多さとそれを分類する方法が確立されなかったことに因ります。
栽培種が野生種と交雑したり突然変異を起こしたことで生まれたさつまいもの仲間は非常に多く存在しています。
研究のために多くの野生種のさつまいもやさつまいもに近い植物が世界中から採取されましたが、研究者によっては外見の些細な違いで種類分けを行ってしまったため、さつまいもの系統分類は混乱してしまったのです。
現在でもさつまいもの的確な分類方法は確立されていないそうです。

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991026 長い間、形や生息している地域などをもとに、さつまいもの原種や原産地の研究が進められてきました。
しかし現存するさつまいもの種類分けが不明確な中で、その形をもとに原種を探すことは非常に困難な作業です。
さつまいもの原産地はアジアであるとかアフリカであるなど様々な説が唱えられ、一時期はさつまいもの原種や原産地を特定することは不可能だとまで言われました。

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行き詰まっていたさつまいもの祖先探しが再び進展したのは、近年の植物の染色体研究の進歩のおかげです。
染色体を分析することで様々な栽培植物の原産地が判明しましたが、さつまいもの原種探しにもこの方法がとられたのです。
さつまいもの染色体の数を基にしたゲノム分析は日本人研究者によって積極的に行われました。
分析結果が出てもその結果について日本人研究者とアメリカ人研究者との間で見解の相違などがあったため、簡単には結論に至りませんでしたが、現在ではさつまいもの祖先の植物は主にメキシコから南米北部に生息する植物であることが分かっており、最初に栽培され始めたのもこの地域だとみられています。

ペルー海岸のチルカ谷の遺跡から発見された紀元前8千年から紀元前1万年頃のサツマイモの根などの考古学的資料から、紀元前3000年には赤道近くの熱帯アメリカを中心とした広い地域でサツマイモは食べられていたと考えられています。

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さつまいもがアメリカ大陸からどのように世界中に伝播していったかについてもはっきりとしたことがまだ分かっていません。
しばらく前までは、コロンブスがさつまいもをアメリカ大陸からスペインに持ち帰り、その後世界中に伝えられたという説が一般的に信じられていました。

しかし近年になってこの説が間違いであったことが判明したのです。
コロンブス以前にアメリカ大陸以外の地域にさつまいもはなかったという考えは、アメリカ大陸に生息する植物の原種の仲間が他の場所では発見されなかったという根拠に基づいていました。
しかし、1940年代前後に太平洋のポリネシアのタヒチ島周辺やニュージーランドで、さつまいもの祖先に近い植物が栽培されていることが発見されたのです。
これにより有史以前にさつまいもはアメリカ大陸から南太平洋の島々に伝播していたことが判明しました。

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しかし、そのような太古にさつまいもがどのようにして太平洋を渡ったのかは今でも確かな答えが得られていません。
一説では、さつまいもが海流に乗ってポリネシア方面まで流れていったとされています。
別の説では、アメリカ大陸に住んでいた人達が南太平洋地域に向けて航海した際にさつまいもを運んだと考えられています。
筏を使って南米から南太平洋の島に到達できることはコン・ティキ号で有名なヘイエルダールが実証しています(この実験航海について書かれたヘイエルダールの『コン・ティキ号探検記』は、誇張した表現が省かれた実験レポートのように簡潔な文章ですが、堅い読物ではなく所々でクスッと笑わせるようなユーモアがたっぷり盛り込まれた本です)。

しかし、カボチャやとうもろこしはそのような昔に海を渡っていないと考えられており、なぜさつまいもだけが南米からポリネシアまで伝わったのかも、さつまいもの謎の一つになっています。

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1974年に発表されたニュージーランドのエン博士の説では、さつまいもが世界に広まった経路は三つあったとされています。
一つは1492年にコロンブスがアメリカ大陸からヨーロッパに運び、その後アフリカやインド、中国、インドネシアに伝播したルートです。
二つ目は16世紀にスペイン人がメキシコからフィリピンに運んだ経路だと考えられています。
そして三つ目が南米のペルーからイースター島などを経てポリネシアやニュージランドに伝わったルートです。
さつまいもがポリネシアに伝わったのは有史以前のことなので、当然それについて書かれた文献は無いのですが、わずかな手掛かりから紀元前1000年頃にさつまいもはポリネシアに伝わっていたのではないかと研究者達は考えています。

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<参考書籍>

坂井健吉(1999)『さつまいも』法政大学出版局
タキイ種苗株式会社出版部(2002)『都道府県別地方野菜大全』農山漁村文化協会

<さつまいも関連>

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