« マグロの血合は伊達じゃない | トップページ | 里芋と人里 »

2006/09/11

ザウアークラウトの作り方

千切りキャベツを塩漬けにして発酵させることで作るザウアークラウトは乳酸菌の働きにより酸味と独特の風味を持ちますが、酢は使われていないのでキャベツの酢漬けではありません。(関連:「酢漬けいろいろ」)

「酸っぱいキャベツ」という意味のドイツ語である「ザウアークラウト」という名が広まっているせいか、キャベツの塩漬けといえばドイツを連想する方も多いかもしれません。
確かにドイツでのキャベツの消費量はヨーロッパの他の国と比べても多く、ヨーロッパでドイツ人は「キャベツ野郎」のあだ名で呼ばれることもあるくらいですから、ドイツ人とザウアークラウトとの関係も深いものがあります。

しかしザウアークラウトはドイツだけの食べものではなく、オランダやルーマニア、ポーランド、ロシアなどヨーロッパの中部や北部を中心に昔から食べられてきた漬け物なのです。

            ○

紀元前のヨーロッパで既にザウアークラウトは作られていたという説すらあるようですが、アジアで作られていたものが中世の頃にヨーロッパに伝わったという説が広く受け入れられているようです。
6世紀頃の中国の文献に、キヤベツを米の粥やカラシナ、ウリ、梨などと一緒に瓶の中に入れて、塩や塩水で漬け込んで作る食品についての記述があり、この漬け物は万里の長城建設に従事した労働者に給与の一部として与えられたといいます。
このような漬け物が中央アジアを通じてヨーロッパに伝わってザウアークラウトになったのではないかと考えられています。

            ○

中世以前のヨーロッパでは、キャベツは貧困層が食べる野菜と見なされ、ザウアークラウトも主に地方の貧しい農村などで作られていました。

ドイツの文献にザウアークラウトが初めて登場するのは、1543年に行われた女王の結婚式の記録です。
祝いの宴会でザウアークラウトがレバーの煮物に添えられて来賓に振る舞われたと記されており、これがドイツでのザウアークラウトに関する最古の記録になっています。
女王の結婚式で出されたくらいなので、この頃にはザウアークラウトの「格」も上がっていたということなのでしょう。

            ○

ザウアークラウトの材料には堅い種類の白キャベツなどが使われます。
ザウアークラウトの作り方は国によって多少異なります。
基本的な作り方では、収穫したキャベツを一週間くらい積み重ねて放置するところから始まります。
キャベツを放置するのはキャベツに含まれる水分を減じ、熟成を促すためです。
しばらく放置したキャベツの外側の葉と芯を取り除いた後に、水で洗ってから千切りにして塩をまぶして漬け込みます。
このときに使う塩の量はキャベツの重さの2〜3%程度だそうです。

キャベツを漬け込むときはできるだけ空気が入らないようにギッチリと容器に詰めます。
乳酸菌は塩に強い反面、空気に弱く、逆に人間にとって有害なカビの多くは空気を必要としますが塩には弱いため、キャベツとキャベツの間には塩をよくすり込み空気を抜く必要があるのです。

容器にキャベツを漬け込み、上から蓋をして重しを載せると、翌日からは漬けたキャベツの上に汁が染み出てきます。
この汁を取り除きつつ発酵の完了を待ちます。
気温が高いほど発酵が早く進み、30℃くらいだと1週間で漬け上がりますが、20℃くらいの気温だと3週間程度掛かります。
長く漬けるほど酸味が強くなり、出来上がりはザウアークラウトの酸味の量で決められます。

            ○

現在のザウアークラウト製造にはステンレス製のタンクが使われていますが、昔はワインづくりに使われた古い樽などにキャベツが漬け込まれていました。
樽に漬け込んだ時代以前のポーランドでは地面を掘った溝の内側に板を打ちつけ、そこにキャベツを漬けたといいます。
その溝の中に丸ごとのキャベツとバラしたキャベツの葉を交互に重ね入れ、一番上には千切りキャベツが載せられました。
地方によってはキャベツを漬ける前に湯に通したり、オーブンなどで軽く加熱したり、リンゴや桜の葉、ディルなどをキャベツと一緒に漬け込むこともありました。
キャベツを特製の溝に漬け込んだ後は、その上を棒で叩いたり足で踏みつけたりして中から汁を出し、やはりこの汁を取り除いて更に漬け込みました。

溝を使った時代の後、ポーランドでも樽が使われるようになります。
樽に漬けたキャベツの上には布をかぶせ、その上から蓋をして重しを載せます。
樽の上層部は空気に触れ易いためカビが発生しやすく、カビが繁殖したらそれを取り除き、布と樽の蓋を洗います。
ザウアークラウトを長期保存する場合は、2週間ほど暖かい場所で発酵させてから、地下や倉庫などに樽を移動させていました。

オランダではキャベツを桶に漬け、発酵期間中はこの桶を部屋の中に置いておき、その後温度の低い場所に移していたそうです。

            ○

ブルガリアのザウアークラウトの作り方は、キャベツを丸ごと塩漬けにしてしまいます。
これにホースラディッシュやとうもろこしなどを加え、漬け容器に水を入れます。
毎日2週間、容器の底から水を抜いては新しい水を上から注ぐ作業を続け、その後温度の低い場所に漬け容器を移し、1ヶ月掛けて発酵させました。

            ○

ドイツやオランダからアメリカに移り住んだ人達が移住先でザウアークラウトを伝えたため、現在のアメリカでもザウアークラウトはよく食べられています。
アメリカでローカライズされたザウアークラウトには砂糖が加えらることもあります。

            ○

ザウアークラウトを食べるときは茹でたり炒めたりして加熱してから食べるのが一般的ですが、ヨーロッパなどで便秘の薬として食べる時は、ザウアークラウトが含む乳酸菌の働きを高めるために生で食べたりもするようです。
ザウアークラウトはビタミンCも多く含むため、風邪薬の代わりに煮込んだザウアークラウトが食べられたりもします。
ザウアークラウトを漬けたときに出る汁は、これに豚肉やラード、小麦粉などが加えられスープにして食べられたりもしました。

            ○

1950年代ころまではヨーロッパでは自家製のザウアークラウトが食べられていましたが、現在は家庭でザウアークラウトをつくる家は少なくなり、一般的には市販のものを買うことが多いようです。

<参考書籍>
小泉武夫 (2000)『漬け物大全—美味・珍味・怪味を食べ歩く』平凡社
スー シェパード(2001)『保存食品開発物語 』文藝春秋
南直人(2003)『世界の食文化 (18) ドイツ』農山漁村文化協会

<漬け物関連>

NHKきょうの料理 漬け物上手になる! NHKきょうの料理 漬け物上手になる!
都築佐美子 久保香菜子

by G-Tools
Hario ガラスの一夜漬け器 ストライプ GTK-1ST Hario ガラスの一夜漬け器 ストライプ GTK-1ST

by G-Tools
小林カツ代の生活提案 ちょこっと漬け物 K-239 小林カツ代の生活提案 ちょこっと漬け物 K-239

by G-Tools

|

« マグロの血合は伊達じゃない | トップページ | 里芋と人里 »

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/62471/12035663

この記事へのトラックバック一覧です: ザウアークラウトの作り方:

« マグロの血合は伊達じゃない | トップページ | 里芋と人里 »