« 里芋と人里 | トップページ | パンとイースト菌と発酵 »

2006/09/13

椎茸栽培とビタミンD

しいたけは干したものはもちろんのこと生しいたけも一年中流通していますが、秋ならば9〜11月が旬だとされています(春ならば3〜5月)。
カサが開ききらずに巻き込んでいて、カサの内側の白い部分が黄ばんだりせずに真っ白いものが新しい生しいたけです。
また、軸の部分は太く短く、カサの部分は肉厚のものが良いものです。

しいたけの栽培方法には菌を木に植え付ける「原木栽培」と、おがくずに糠(ぬか)などの栄養を混ぜたものに菌を植え付ける「菌床栽培」という作り方がありますが、原木栽培で作られたしいたけの方が味は良いといわれています。
原木栽培のしいたけが店頭に並ぶことは滅多にないかもしれませんが、原木栽培されたものであれば包装パックにそれを示すシールが貼られているはずです。

干ししいたけでは、肉薄のカサを広げた形の香信(こうしん)よりも、カサが肉厚で丸まった形の冬茹(どんこ)の方が栄養を多く含み、味も良いとされています。

            ○

「椎茸(しいたけ)」の名の由来は、椎(しい)の木になる茸(きのこ)というしいたけの生態が語源となっています。
しかし、しいたけは椎の木だけでなくブナ科広葉樹のナラやカシ、クリなどの枯れ木でも繁殖します。

            ○

しいたけは東アジアや南太平洋に分布しており、日本では古代の昔から山林に自生していたため日本人のしいたけ食の歴史もかなり昔に始まっています。

しかし、しいたけの人工栽培は日本よりも先に中国で行われたことが記録から分かっています。
12世紀の中国の文献に、皮の付いた木材に斧で傷をつけると茸が生えてくるという記述があり、これがしいたけだと考えられています。
14世紀の『農書』という書物には、しいたけが「香葷(こうじん)」の名で登場しており、やはり材木に切れ目を入れて栽培する方法が記されています。

            ○

日本でしいたけの人工栽培が開発されたのは江戸時代になってからのことです。
現在の国内最大のしいたけ産地は大分県ですが、江戸時代には伊豆の天城山でしいたけ栽培が積極的に行われていました。
江戸時代に参勤交代の途中で三島に宿をとった豊後竹田藩主がしいたけを食べて大いに気に入り、伊豆のしいたけ栽培職人を領国である今の大分県にあたる豊後(ぶんご)に連れ帰ったとされており、ここから大分県のしいたけ人工栽培の歴史が始まったといわれています。

            ○

ヨーロッパに初めて持ち込まれた椎茸は日本産のものでした。
明治8年に日本にやって来た英国探検船のチャレンジャー号が日本で手に入れた椎茸をヨーロッパで初めて紹介しました。
その後、椎茸の学名は「レンティヌス・エドデス」と定められましたが、「エドデス」の「エド」は日本の「江戸」に由来しています。

            ○

昭和になってから、椎茸になる木材腐朽菌(もくざいふきゅうきん)を木片で純粋培養し、この木片を繁殖させる木に打ち込む栽培方法が開発されました。
それ以前は、木材に付けた傷に椎茸の菌が入り込んでくれるのを待つしかありませんでしたが、菌を繁殖させた木片を使う方法により、木に植え付けた菌が無事に繁殖する確率が高められました。

            ○

第二次大戦以前に国内で生産されていた椎茸の殆どは干し椎茸に加工され、その内の約80%は中国へ輸出されていました。
その当時は生椎茸が現在のようには一般市場に流通しておらず、生椎茸は一種の贅沢品とされていたのです。

1950年代になると一般家庭にガスや電気が普及し、逆に炭の需要が減少しました。
このため木炭の材料になる木材が余ってしまい、こうした木材が椎茸の人工栽培で菌を植え付ける「ほだ木」に使われたことで、生椎茸生産量が増加したということがありました。
その後の栽培技術や輸送方法の改善により、1980年代には生産額で見た場合に生椎茸が干し椎茸を上回り、1990年代になると生椎茸の生産額は干し椎茸の約2倍近くにまで増加しました。

            ○

しかし干ししいたけには干ししいたけの良さがあります。
干ししいたけは水分含有量が少なくなる分、栄養やアミノ酸やグアニル酸などのうま味成分が濃縮されています。
また、しいたけはもともと骨をつくる働きをするビタミンDを多く含みますが、日光にあたるとしいたけが含むプロビタミンDもビタミンDに変化します。

            ○

昔の干ししいたけは10日以上天日で干されていましたが、現在は機械を使って一日で水分がとばされています。
機械で乾燥させた干ししいたけはビタミンD含有量が天日干しのものに比べて極端に少ないことが分かっています。
機械乾燥の干ししいたけを買っても、家で天日干しすることで栄養価を高めることは可能です。
生しいたけでもカサの裏を上にして天日に1時間も干すと旨味が増しますし、2〜3日も天日干しするとしいたけが含むビタミンDの量は増加するのです。

            ○

しいたけが含むビタミンDは脂溶性で熱に弱いので、しいたけの炒め料理をつくるときはサッと熱を通す程度に留めないと栄養が流れ出てしまいます。

また、しいたけに水が付くとしいたけの味や香りは落ち、保存性も低下してしまうので注意が必要です。
水で洗うなどはもってのほかで、汚れは拭き取ることで落とします。

            ○

中国でしいたけは不老長寿の薬として扱われたことすらあり、昔からしいたけには強壮作用があると言われてきました。
現在でもしいたけが持つとされる抗がん作用、コレステロール抑制作用、抗ウイルス作用などについての研究が進められています。
季節の変わり目で体調が崩れやすくなる時期ですが、これからおいしくなるしいたけは健康維持に貢献してくれる食材です。

<参考書籍>
高橋素子(2001)『Q&A 野菜の全疑問—八百屋さんも知らないその正体』講談社
日本ベジタブル&フルーツマイスター協会(2003)『野菜のソムリエ—おいしい野菜とフルーツの見つけ方』小学館
月刊食生活編集部(1992)『グルメのおもしろ語源集—食べものふしぎ博物館』コア出版
井上勝六(1993)『「薬喰い」と食文化』三嶺書房
吉田豊(1995)『食卓の博物誌』丸善
服部 幸応 (2004)『大人の食育』日本放送出版協会

<きのこ関連>

きのこちゃん きのこちゃん

by G-Tools
きの小らいと レッド きの小らいと レッド

by G-Tools
GREENHOUSE ポリレジン小人ソーラーライト ハンキングきのこ 2241-BS GREENHOUSE ポリレジン小人ソーラーライト ハンキングきのこ 2241-BS

by G-Tools

|

« 里芋と人里 | トップページ | パンとイースト菌と発酵 »

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/62471/12035671

この記事へのトラックバック一覧です: 椎茸栽培とビタミンD:

« 里芋と人里 | トップページ | パンとイースト菌と発酵 »