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2006/08/01

タロイモ・ヤムイモが渡った南の海

8000〜10000年前に、タイ西北部の照葉樹林帯で生育していた野生のタロイモやヤムイモを人間が採取して栽培を始めたといわれています。
野生のイモを掘り出した時にイモの根や小イモが堀跡の穴に落ち、しばらくするとイモを掘り出したはずの場所にまたイモが育つことに気づいた人間がこれを意図的に行うようになったのがイモ栽培の始まりであり、人間が始めた最初の農耕だったと考えられています。
今でもタイ西北部では、山中の湿地に群生する野生のタロイモや山の斜面に育つ野生のヤムイモが見られます。

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タイ西北部のタロイモやヤムイモ栽培はマレーシアやインドネシアの東南アジアに伝わり、その後伝播経路は東と西に分かれたと考えられています。
東回り経路ではフィージーやサモア、トンガ、果てはポリネシアなどのオセアニア地域に伝わり、西廻りではアフリカのマダガスカルを経由して、そこから陸路と海路を通じて西アフリカに伝わったといわれています。
東南アジアより先の伝播経路の殆どは海路だったのです。

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これは、太古の昔に小さな船に乗って大海原を何日も掛けて渡る時に、タロイモやヤムイモを食糧として船に載せていたから長い航海に耐えることができたとも言えます。

仮に食糧がふんだんにあったとしてもビタミンCを摂取しなければ壊血病に掛かって命を落としてしまいます。
海を渡った人達が持っていたものの中にタロイモやヤムイモが入っていたというよりも、ビタミンCを含むタロイモやヤムイモを携帯していた人々だけが古代の海を渡ることができたとも考えられるかもしれません。

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16世紀まで、アメリカ大陸以外の国々ではイモといえばタロイモとヤムイモのことでしたが、アメリカ大陸からヨーロッパにジャガイモとサツマイモが伝わると、これらはタロイモやヤムイモより収穫量が多かったため世界中に瞬く間に広まり、17〜18世紀になるとタロイモやヤムイモを栽培していた熱帯地方にも普及していきました。
しかしアメリカ大陸で栽培されていたイモは水はけの良い土地を好むため、湿潤地域を中心に現在でもタロイモやヤムイモが常食されています。

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タロイモの故郷のタイでは、タロイモを米と一緒に炊き込んで食べたりした時代が一昔前まであったようですが、今はヤムイモもタロイモもおかずとしてではなく、甘く味付けたおやつのような食べものをつくるときの材料にしているのが殆どで主食としては食べられていません。

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サモアやトンガ、ポリネシアでは今でもタロイモやヤムイモが主食となっています。
フィージーのポリネシア系の住民は水田でタロイモを栽培しています。
田んぼでタロイモをつくる方法は他のミクロネシアの島々や沖縄でも行われています。
タロイモを連作すると土壌の栄養がなくなり収量が年々減少してしまいますが、水田で栽培すると水の入れ替えによって栄養分が補給されるため連作をしても安定的に収穫量を確保することが可能なのです。

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イモは穀類に比べれば栽培に掛かる手間が少なく収穫も安定しています。
安定的に収穫できるイモが常食作物になったことが、オセアニア地域の人々のおおらかな気質を形成した一因だとも言われています。

その反面、イモは多量の水分を含み穀類に比べて貯蔵性が劣り、容積がかさ張るため携行には不向きです。
年貢として取り立てて計画的に食料を再分配したり、他国を侵略する大軍の糧食に用いるにはイモは向いていませんでした。
それ故にタロイモやヤムイモを主食としたオセアニア地域の民族は大きな社会や国家を形成できなかったのだという説もあります。

<参考書籍>
NHK取材班(1990)『人間は何を食べてきたか 麺、イモ、茶 』日本放送出版協会
山田均(2003)『世界の食文化 (5) タイ』 農山漁村文化協会
吉田 豊(1995)『食卓の博物誌』丸善

<イモ関連>

ホーロー 焼いも器 24cm 石付き HA-Y
B000BY4AWY
サツマイモの絵本
たけだ ひでゆき にしな さちこ
4540961691
きょう・すぐ・レシピ〈13〉根菜・芋のおかず
日本放送出版協会
4140332085

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今日は主食で食べるバナナ編で書いた「お年賀の篭」に入っていたヤムイモを料理した。ちなみにヤムイモというのは日本のヤマイモの仲間の総称だけれど、すごくたくさんの種類がある。ヤム(Yam)というのは英語、でも語源はきっと環太平洋のどこかから来ていると思う。ヤップ語ではヤムなんて大雑把な呼び方はしないで、種類ごとに違う名前で呼んでいる。写真のイモはドゥオグという種類だ。私の家のタイルは1辺が1フット(約30センチ)なんだけど、それにすっぽりはまる大きさだ。もちろん、これより大きいのも小さいのもある。 ヤ... [続きを読む]

受信: 2006/10/27 21:02

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