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2006/08/16

そうめんの元祖

「そうめん」と「うどん」と「ひやむぎ」は何が違うのでしょう。
日本農林規格(JAS)では、そうめんのことを「小麦粉を原料とした直径1.3mm以下の乾麺」と規定しています。
直径が1.3mmから1.7mmまでのものは「ひやむぎ」、1.7mm以上の太さになると「うどん」に分類されます。
現在これらの麺はほとんど同じ原料を使って機械で製麺されているため、太さで分類されているのですが、そうめんとひやむぎ、またはそうめんとうどんは本来異なるタイプの麺です。

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そうめんは、小麦粉に塩と水を加えてこねたものの表面に粘りを出すための油を塗り、これをロープのように延ばして二本の棒に巻き付けた後、それらの棒を反対方向に引き離してロープ状の生地を糸のように細長く引き延ばすことで作られます。
うどんを作るときも小麦粉に水と塩を加えて練りますが、油は使われず塩だけでねばりが出され、これがワンタンの皮のように広げられてから包丁で細長く切り出されます。

          ○

そうめんのように作られる麺を「延べ麺」、うどんのような麺を「切り麺」として区別できます。
うどんを冷やして食べるようになったとき、うどんをより細く切ったことからひやむぎが生まれたといわれ、うどんとひやむぎは兄弟とも言えます。
うどん・ひやむぎの切り麺兄弟とそうめんとでは家系が異なるようなものなので、これらの麺が全て従来の製法でつくられているならば、体型が太いか細いかの外見だけで区別されることはなかったでしょう。
ただし日本農林規格でも、そうめんの原料に油が使われる場合には、これを「手延べそうめん」に分類しています。

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麺生地を延ばすそうめんの製法は鎌倉時代に中国から伝わり、僧院などで盛んに作られ、室町時代にはそうめん作りの技法が確立されたと考えられています。
そうめんは仏への供え物として扱われたり精進料理に使われたことから一般にも広く普及しました。
伝来時には中国語の「索麺(ソーミエン)」として持ち込まれたのに、室町時代になって「索麺」と書き表すだけでなく「素麺(そうめん)」という表記も使われ始めたのは、中国語で精進料理のことを「素菜(スーツァイ)」といい、索麺が精進料理として食べられたために素麺とも書くようになったのだという説もあります。

          ○

では鎌倉・室町時代に伝わった索麺がそうめんの始まりかというとそうとも言えません。
それ以前の食べものにそうめんの原型ともいえるものがあるからです。
それは奈良時代に中国から伝わった「索餅(さくべい)」で、日本では「麦縄(むぎなわ)」とも呼ばれたものです。
この索餅が登場する文献の『延喜式』には、材料として米粉と小麦粉と塩を1:2.5:0.09程度の割合で使うことが書かれていますが、作り方は詳述されておらず、どのように食べられたかについては後世になって二つの説が唱えられました。

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一つは、索餅とは麺であり、太い麺だった索餅が鎌倉時代に普及した細いそうめんの源流だとする「索餅 = 麺」説で、以前はどちらかというとこの説の方が有力でした。

しかし伊藤汎氏の著書『つるつる物語—日本麺類誕生記』で、江戸時代の文献で「索餅」と「素麺」という言葉が同じ箇所で使われているものがあることが指摘されたり、『延喜式』に記された材料で細長い麺状の食べものができるのかなどの疑問もあって、次第にもう一つの説である「索餅 = 菓子」説が支持されるようになってきたようです。
中国語で「索餅」とは「索(なわ)のような小麦粉製品」という意味だから、練った小麦粉を延ばして二本の縄をより合わせたようにしたものが索餅だと考え、小麦粉を練って延ばすところは素麺と共通するところではあるが、索餅は麺ではなく菓子だったと捉えているのが「索餅 = 菓子」説です。

以前「七夕と索餅と酒」という題で索餅のことにふれたときは、「索餅 = 麺」説をとる石毛直道氏の『文化麺類学ことはじめ』などを参考にしたため、「索餅は蒸したり茹でたりして汁につけて食べた麺だと考えられているが、油で揚げた菓子だという説もある」と多少「索餅 = 麺」説よりの書き方になりました。
索餅は麺だったのか菓子だったのかを示す決定的な証拠はまだ出ていないようですが、今は「索餅 = 菓子」説の方が定説として扱われていることが多いようです。

<参考書籍>

石毛直道(1995)『文化麺類学ことはじめ』講談社
大塚滋(1997)『パンと麺と日本人—小麦からの贈りもの』集英社
岡田哲(2002)『ラーメンの誕生』筑摩書房
奥山忠政(2003)『文化麺類学・ラーメン篇』明石書店
NHK取材班(1990)『麺、イモ、茶人間は何を食べてきたか 麺、イモ、茶 』日本放送出版協会
伊藤汎氏(1987)『つるつる物語—日本麺類誕生記』築地書館

<そうめん関連>


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