酢漬けいろいろ
日本での酢の大量生産は江戸時代に始まり(関連:「酢の歴史」)、同時期に漬け物が発展したこともあり、この頃から酢漬け食品が一般家庭で食べられるようになりました。
現代の日本人にも馴染み深い酢漬けといえばらっきょうとしょうがの酢漬けでしょうか。
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昔作られていたらっきょう漬けは食塩水に3週間漬けられ、乳酸発酵させることで作られていましたが、今のらっきょう漬けの作り方は、一度らっきょうを食塩水に浸けてから塩抜きして、その後甘酢に2週間ほど漬けるのが一般的です。
甘酢の作り方は、酢カップ1に砂糖を大さじ4〜6、塩を小さじ0.5〜1を加え一度沸騰させて作ります。
一度煮きることで酢の味の角が取れてトゲトゲしさがなくなります。
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寿司屋でガリとよばれるしょうがの甘酢漬けは今やすしには欠かせません。
しょうがに含まれる芳香成分が魚の生臭さを隠す働きをし、しょうがの殺菌作用や抗酸化作用と酢がもつタンパク質分解酵素が生魚を食べたときの胃腸の負担を減らし消化の手助けをしてくれます。
もちろん、すしを食べる合間にガリをつまめば口中が爽やかになってすしの食が更に進むという効果もあります。
寿司店で出されるガリは根しょうがを使ったものが多いかもしれません。
新しょうがを甘酢漬けにするときれいなピンク色になりますが、根しょうがは白っぽい仕上がりになります。(関連:「しょうがの甘酢漬け」)
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酢漬けは世界各地にあります。
中国にはにんにくを甘酢に漬けた「糖醋蒜」というものが煮物に使われたり、「醋薑」と呼ばれるしょうがの甘酢漬けがそのまま食べられたり炒め物に使われたりしています。
東南アジアでよく食べられる輪切りとうがらしの酢漬けは、麺料理やチャーハンの類いに入れられたりします。
タイの食堂のテーブルの上には、調味料セットとして唐辛子や砂糖、ナンプラーの他に「ナムソム」と呼ばれるとうがらしの酢漬けも置かれています。
シンガポールのサンドイッチ店のサブウェイでは、野菜類を全部入れて下さいと頼んだら、とうがらしの酢漬けも入れてくれた記憶があります。
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日本人に有名なヨーロッパの酢漬けといえばきゅうりのピクルスでしょうか。
英語の「ピックル(pickle)」は塩水や酢に漬けるという動詞で、複数名詞の「ピクルス(pickles)」になると野菜や果物を漬けた漬け物全般を指します。
ザウアークラウトがキャベツの酢漬けと和訳されることもあるようですが、ザウアークラウトに酢は使われておらず、塩に漬けられたキャベツの乳酸発酵によって酸味が出されています。(関連:「ザウアークラウトの作り方」)
日本に輸入されるピクルスの多くは酸味の強くない甘酢のピクルスですが、ヨーロッパで好まれるピクルスはもっと酸味の強いものだといわれます。
油を入れすぎた料理やラーメンのスープに酢をほんの少量入れるとくどさが和らぐ感じがしますが、それと同様に油を多く使う欧米の料理には酸味が強い漬け物のほうが合うのでしょう。
ピクルスは日本に浸透しているとは言えませんが、その一つの現れでしょうか、日本ではピクルス用の短いきゅうりの品種が殆ど開発されてきませんでした。
アメリカやロシアではピクルス用きゅうりの品種は多く作られましたが、日本には江戸時代にシベリアから伝来したと言われる「酒田」とその改良型の「最上」の二品種くらいしかありません。
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酢に漬けられるのは野菜だけではありません。
ヨーロッパで魚のマリネは北イタリアやフランスのプロバンス、スペイン、トルコ、バルカン半島などで食べられ、にしんの酢漬けは北欧のビュッフェ形式の食事スモーガスボードに欠かせません。
塩漬けにしんを三枚におろして酢に漬けるのがにしんの酢漬けの一般的な作り方ですが、ドイツのブラートヘーリングと呼ばれるにしんの酢漬けは、にしんが油で揚げられてから酢に漬けられます。
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日本で有名な魚の酢漬けに岡山県のままかり漬けがあります。
関東でサッパとよばれるにしん科の小魚の腹と頭が取り除かれ、塩で身がしめられてから酢で洗われ、酒や砂糖が加えられた酢の中にしょうがや昆布などと一緒に漬けられ作られます。
サッパのことを瀬戸内地方ではママカリと呼びます。
明治初期のジャーナリストの成島柳北がこの魚を食べたときのことを、「その魚、初めて漁船に上がる 魚人、これを食うに美味なり、一船の飯を喫しつくし、ついには隣船より飯を借りて食う」と随筆に書き、この文章の中の「飯借」が魚の名の「ままかり」になり、「ままかり漬け」の名前の由来になったといわれます。
ままかり漬けはご飯に合い、隣の家からご飯を借りなければならないほど食べ過ぎてしまうことから、この漬け物に使われる魚がママカリと呼ばれるようになったのだという説もあるようです。
<参考書籍>
成瀬宇平 (2003)『すしの蘊蓄 旨さの秘密』講談社
大場秀章(2004)『サラダ野菜の植物史 新潮選書』新潮社
小泉武夫 (2000)『漬け物大全—美味・珍味・怪味を食べ歩く』平凡社
スー シェパード(2001)『保存食品開発物語 』文藝春秋
外山健三(1991)『イワシ読本—頭の良くなる魚』成山堂書店
<酢・漬け物関連>
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