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2006/08/07

唐辛子とカプサイシン

「辛味」という言葉はよく使われますが、人が辛いと感じるのは味を感じているのか、それともただ単に刺激を感じているだけなのかという問題は学者達の間で長い間論じられてきました。
しかし、1997年に人が辛さを感じる仕組みについての論文が発表され、この議論にも終止符が打たれました。
その論文での結論は、人が辛さを感じるのは、唐辛子などに多量に含まれる無味無臭の「カプサイシン」が口の中にある熱や痛みを感じる器官に吸着し刺激を与えることで辛さが生じるのだということです。
つまり日常的に「辛味」とは言いますが、「辛い」という感覚は味ではなく刺激なのです。

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唐辛子ダイエットの話題で頻繁に取り上げられるせいか、最近は唐辛子とカプサイシンがワンセットで語られることが多くなりました。
唐辛子の種がついている胎座とよばれる部分と実と胎座をつなぐ隔壁部が特に多くカプサイシンを含んでおり、高い温度と乾燥した環境下で唐辛子を栽培すると、唐辛子が含むカプサイシンの量は増すといわれています。

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Yun_538唐辛子が入った料理を食べると辛くても止められずに食べ続けたり、しばらく間を開けるとまた食べたくなるようなことがあります。
これはカプサイシンが「陶酔感」を作り出しているからなのです。
「辛さ」とは「痛み」であるため、辛いものを食べたときに生じる痛みを和らげるために脳内からβ-エンドルフィンという鎮痛作用をもつ物質が分泌されます。
β-エンドルフィンは麻薬のモルヒネに似た物質であるため痛みを止めるだけでなく人に至福感や陶酔感、多幸感を持たせる作用もあるのです。
このため我慢ができる程度の辛さであれば、辛い料理を食べることには常習性や習慣性、依存性が生じることになり、ヒーヒー言いながらも唐辛子料理を食べ続けることになります。

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一口に辛いと言っても辛さにも程度があります。
一般的には「ピリピリする」とか「ヒリヒリする」とか「ビリビリする」のように辛さのレベルを主観的に表現しますが、これを客観的な数値で表す方法をつくった学者がいました。
1912年に、米国の薬剤師ウィルバー・L・スコヴィルが唐辛子の辛さの程度を測定する技術を開発したのです。
この方法は現在もスパイスメーカーなどで使用されており、辛さを表す単位には発明者の名をとって「スコヴィル」が使われています。
今日までに存在が知られている唐辛子の中で一番辛くない唐辛子はベルペッパーでスコヴィル値は0度、一番辛いのは日本でも最近は有名な「暴君」の異名をつけられたハバネロで35万度あります。

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唐辛子のカプサイシンは自律神経を刺激してアドレナリンの分泌を促し血管を広げるため、摂取すると血液循環が良くなって体温が上昇し発汗します。
そのため唐辛子を食べると入浴後のようなスッキリ感が残ってストレス解消にもなります。
アフリカのある地域ではミルクティーに白唐辛子を入れたものを風邪薬代わりにして飲むそうです。
唐辛子に含まれるビタミンCを摂取しつつ血流を良くすることで風邪をなおすという意味があるのでしょう。

また、エネルギー代謝が促進されるために体内脂質が分解されるといわれ、「唐辛子ダイエット」と称してダイエット食品としても販売されています。

更に、唐辛子のカプサイシンには抗菌作用や抗酸化作用があるため、食品の腐敗を防止する働きをします。
これを利用している一つの例が唐辛子などに漬けられた韓国のキムチです。

<参考書籍>
アマール ナージ(1997)『トウガラシの文化誌』晶文社
高橋素子(2001)『Q&A 野菜の全疑問—八百屋さんも知らないその正体』講談社
山本隆(2001)『美味の構造—なぜ「おいしい」のか』 講談社
鄭 大声 (2001)『焼肉は好きですか?』新潮社
石毛直道(2004)『食卓の文化誌』岩波書店

<唐辛子関連>

こころと体に効くハーブ栽培78種—ハーブのすばらしい魅力を味わうために
宮野 弘司 宮野 ちひろ
4415015158
ケンタロウのにんにく・とうがらし—Hot + strong recipes
ケンタロウ
4418001417
ピリッカラ唐辛子料理
西川 治
4861900433

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