トルティーヤとタコスとメキシコ人
中南米で有名な平焼きパンにメキシコの「トルティーヤ」があります。
メキシコの風土の中で生まれたトルティーヤとトルティーヤを使うタコスは、メキシコの地で昔から食べ続けられてきた伝統料理です。
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トルティーヤの名はスペイン語で「小さなパン」を意味する言葉が語源になったという説があります。
スペインに「トルティージャ」という丸く薄いオムレツ料理があり、これにメキシコの薄いパンが似ていたことからトルティーヤの名がついたという説もあるようです。
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昔のメキシコでトルティーヤの原料となるとうもろこし粉をつくるときには、
乾燥させたとうもろこしの粒を石灰水に一晩浸けて柔らかくして、サドルカーンで挽きつぶしていました。サドルカーンとは厚い石の皿と棒状のすり石からなる石臼の一種で、穀物などの材料を石皿の上に置き、すり石を石皿にグイグイと押し付けるようにして穀物を擂って粉に挽く古代につくられた道具です。
挽いた粉は水で捏ねられ、これを両手で弾くように叩き付けながら薄くのばすか、台の上で生地をまわしながら手のひらでグイグイ押しながら薄い生地にして石板や鉄板の上で強火で焼かれました。
メキシコの気候がイースト菌を繁殖させるのには適さなかったという事情もあったのでしょうが、主食となるとうもろこしの粉では粘り気が出し難いということもトルティーヤのような平焼きパンがつくられた理由となっていると考えられます。(関連:「ピタはなぜ薄いパンなのか」)
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とうもろこし粉に水を加えて捏ねたトルティーヤのパン種は「マサ」というスペイン語名で呼ばれています。
バイオリニストの黒沼ユリ子氏が書かれた『メキシコのわが家へようこそ』という本には、現在のメキシコの家庭でどのようにトルティーヤが作られているかが説明されています。
その中で、メキシコではインスタントのマサも売られているとあります。
また、マサを平たく延ばすのには専用の小型プレス機が家庭で使われているようです。
プレス機と言っても、手のひらよりもちょっと大きいマンホールの蓋の様な形をした二枚の円形の金属板らしきものが蝶番(ちょうつがい)か何かでカスタネットのようにつなぎ合わせてあるもので、二枚の板の間に小さく丸めたマサを挟みパタンと閉じてギュッと押さえつけると二枚の金属板の間に薄いトルティーヤの生地ができあがっているという仕組みのもののようです(こちらのブログに写真がありました)。
『メキシコのわが家へようこそ』では色々なメキシコ料理のレシピがきれいな写真と一緒に紹介されています。
日本語で書かれたメキシコ料理の書籍が少ない中で、『メキシコのわが家へようこそ』は貴重な本になっています。
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調理した肉や野菜をトルティーヤに挟んでソースを掛けたものがタコスとよばれる料理で、メキシコではタコスを売る店は「タケリア」と呼ばれています。
タコスは古代から食べられてきた料理で、特にトルティーヤにいんげん豆をのせてとうがらしのソースをかけたものはメキシコ・インディアンの大切な伝統食でした。
トルティーヤに使う乾燥とうもろこしの粒を水に浸けるときに石灰が加えられるのは、とうもろこしを粉に挽き易くするのと同時に生地に粘りを出す意味がありましたが、石灰が加わることでトルティーヤにはカルシウムが豊富に含まれるという利点もあります。
いんげん豆にはタンパク質が豊富で、ソースに使われるとうがらしにはビタミンが多く含まれます。
いんげん豆をトルティーヤで挟んで唐辛子のソースをかけたタコスは伝統から生まれたバランス食品だったのです。
しかもトウモロコシといんげん豆を同じ土地で栽培すると、いんげん豆の根に繁殖する根粒バクテリアが地中に窒素化合物を供給するために、とうもろこしの生育が良くなるという栽培する上での利点もありました。(関連:「豆に頼る細菌と穀物」)
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ところで、トルティーヤを使った料理でナチョスというものがあります。
ナチョスを考案したのはメキシコ人ですが、ナチョスはメキシコの伝統料理ではありません。
アメリカの国境近くのメキシコのピエドラス・ネグラスにあるレストランで働いていたイグナチオ・アナヤ(Ignacio Anaya)という人が、食材が限られた中でアメリカの将校夫人達のために軽食を作ることを命じられ、パリパリに焼いたトルティーヤの上にチーズとトウガラシを載せて出したのが「ナチョス」の始まりだといわれており、ナチョス(Nachos)の名は考案者の名前のイグナチオ(Ignacio)に由来しているようです。
イグナチオ・アナヤは1975年に亡くなっています。
<参考書籍>
黒沼ユリ子( 1996)『メキシコのわが家へようこそ』主婦と生活社
井上勝六(1993)『「薬喰い」と食文化』三嶺書房
大塚滋(1997)『パンと麺と日本人—小麦からの贈りもの』集英社
舟田詠子(1998)『パンの文化史』朝日新聞社
シルヴィア・ジョンソン(1999)『世界を変えた野菜読本—トマト、ジャガイモ、トウモロコシ、トウガラシ』晶文社)
ダナ・R. ガバッチア(2003)『アメリカ食文化—味覚の境界線を越えて 』青土社
<メキシコ関連>
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