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2006/08/03

なすの生まれ故郷

茄子(なす)は熱帯アジアのインドが原産地です。
インドのベンガル湾からその北東にかけての地域では現在でも野生種の茄子が生息しています。

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夏に収穫される夏の実、つまり「夏実」が転じて「なすび」になったという説があります。
温帯気候の日本では夏にのみ露地栽培されますが、熱帯地方では多年草として栽培することができます。
江戸時代中期ころのある日本人が熱帯地方で35年間生育したなすの「巨木」を見て驚いたことを記録しています。

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16世紀頃に、野生種の茄子を薬用に採取していたアラブ人がアジアからヨーロッパになすを伝えました。
その当時のヨーロッパの植物学者がなすは栄養価が無いだけでなく精神を錯乱させ気を狂わせる有毒な果実だと断じたため、ヨーロッパでなすが食べられることはありませんでした。
なすは観賞用植物としてヨーロッパで徐々に広まり、17世紀になってやっと限られた地方で食べられるようになります。
しかし、なすに毒があるという話しは19世紀後半になってもヨーロッパに残っていました。

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イランでバンディンジャといえば肉と茄子の煮込み料理の名前です。 Eggpl
6世紀のアラブのある記録では、なすそのものの名が「バンディンジャ」とされています。
この言葉にオウがつけられて「オウバンディンジャ」となり、それが転じてイギリスではなすのことを「オウバージン(aubergine)」と呼ぶようになったのですが、これもアラブ人がヨーロッパになすを伝えたことを示す名残のようなものといわれています。

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インドを発したナスがヨーロッパとは反対方向の東回りで中国に伝わったのは6世紀から7世紀の初め頃です。
6世紀に書かれた中国の農業書『斉民要術』になすについての短い記述があり、そこでは形は丸く生で食べられる瓜の一種として説明されています。

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タイにはマクア・ヤーオと呼ばれるビー玉くらいの大きさのなすで緑色の種類のものがありますが、熟す前で皮が薄く柔らかいマクア・ヤーオをタイの人は生のままナムプリック(魚や野菜などの材料にトウガラシを加えたペースト)につけて食べています。
日本でも地方によって様々な形のなすがつくられていますが、あの小粒のなすを漬け物にしたらお茶漬けに合う新しい名産品ができるかもしれません。

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8世紀頃に、なすは日本にも伝わったことが『正倉院文書(しょうそういんもんじょ)』から分かっています。
奈良時代のなすの殆どは漬け物にされていたようで、『正倉院文書』にも醤油や味噌、酒粕、塩などになすを漬ける保存法が記されています。
江戸時代になってなすの生産量は急増し、この頃から様々ななす料理が考案されました。

<参考書籍>
池上俊一 (2003)『世界の食文化 (15) イタリア』 農山漁村文化協会
山田均(2003)『世界の食文化 (5) タイ』 農山漁村文化協会
吉田よし子(1998)『野菜物語—大地のおいしい贈りもの』TOTO出版
浪川寛治三(1996)『野菜物語—たべもの探訪』一書房

<茄子関連>

茄子 (1)
黒田 硫黄
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森からの贈り物 自然が大好き - サオの木 茶さじ ナス 5本組 5ST37SW
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ぬか漬け用 鉄ナス 南部鉄 NZ-TN
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