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2006/08/09

塩辛は調味料

古代メソポタミアでは魚の塩漬けと大麦の粥が主食になっていたといわれています。
昔のアラビア海沿岸などの乾燥地帯でもマグロやサーディーンを塩漬けにして食べており、古代エジプトの遺跡からも魚を塩漬けにする様子が描かれたレリーフが発掘されています。
魚の塩漬けや塩水漬けは古代から続く保存方法なのです。

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魚に塩をして乾燥させる食品には干物や鰹節がありますが、魚を乾燥させずに生のまま塩に漬けておくと、酵素の作用や微生物の働きで発酵が起こり魚のタンパク質は分解されていきます。
うま味成分がつくられながら魚の形は次第に崩れていき塩辛状になりますが、さらに発酵がすすむと液状の魚醤になってしまいます。

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魚を塩漬けにして発酵させたものは液状になった魚醤と完全に液状になっていない塩辛の二つに大別できますが、更に塩辛を、液体に固形状のものが含まれるものと、材料をすり潰してから発酵させたペースト状になったものとに分けることができます。
日本人にとって固形が残った塩辛の最も一般的な例はイカの塩辛ですね。
ペースト状塩辛の例にはベトナムのマム・ロク、マレーシアのプラチャン、インドネシアのトラシなどがあって、これらの材料には小エビなどが使われています。

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室町時代以前の日本人は塩辛のことを「ししびしお」と呼んでおり、魚だけでなく鹿肉や兎肉も塩辛状に塩漬けしていました。
これが中世になって「うおびしお」と呼ぶようになります。
この頃になると獣肉の塩辛が作られなくなったことからこの呼び名に変わったのだといわれています。

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江戸時代の初めころまで塩辛は調味料としても使われていました。
江戸時代初期に刊行された『百姓伝記』(1680年)には、東海地方の農漁村で味噌の代わりに塩辛をすり潰したものを大根や菜っ葉を煮るときの調味料として使っていたことが記録されています。

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しかし江戸時代も中期・後期となるにつれ、イカやカツオ、アミ、ウニ、ナマコの腸(このわた)、鮎の内臓や卵(うるか)(関連:「鮎の香り」)などが塩辛にされるようになり、次第に塩辛は調味料として使われるのではなく珍味として食べられるようになっていきます。
それにつれ「うおびしお」と呼ばれていたものが「塩辛」の名に変わってしまいました。

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テレビでグッチ裕三さんが茹でたジャガイモの上にバターとイカの塩辛をのせた一品料理を作っていたり、道場六三郎さんがイカや野菜を古いイカの塩辛で炒めたり、パスタ本にイカの塩辛パスタなどのレシピが載っているのを見たときに、「ワァ〜、新しい料理法だ」と感心したことがありましたが、塩辛を調味料に使うのは新しいどころか昔からあった料理法で、今の日本人が忘れかけている使い方なのですね。

<参考書籍>
スー シェパード(2001)『保存食品開発物語』文藝春秋
柳田友道(1991)『うま味の誕生—発酵食品物語 』岩波書店
江原 恵 (1986)『江戸料理史・考—日本料理草創期』河出書房新社
石毛 直道 (2004)『考える胃袋—食文化探検紀行』集英社
NHK取材班(1990)『人間は何を食べてきたか カレー、醤油』日本放送出版協会

<塩辛・グッチ裕三関連>

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内山 高典 室橋 裕和

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