« オクラとアフリカ | トップページ | きゅうりの白い粉 »

2006/07/17

クローブの香り漂う島と大航海時代

カレーの香りづけや肉料理の匂い消し、ソースやケチャップの材料として使われるクローブはインドネシアのモルッカ諸島が原産地です。

          ○

クローブの名はフランス語で「釘(くぎ)」を指す言葉「クルウ(clou)」に由来します。
これはクローブの形が釘に似ているためです。
中国語でもクローブを「丁子」や「丁香」と書きますが、「丁」は釘を意味します。
中国漢代の文献では、クローブが「ヒヨコの舌」という名で記録されています。
これもやはりクローブの形状から名付けられたものと考えられます。

          ○

2世紀には既にアレキサンドリアがクローブを輸入していたという記録が残っています。
4世紀にはクローブがローマ帝国に伝わっていたことが、その当時のものとされる埋葬品の中からクローブが発見されたことで分かっています。
8世紀頃、クローブはアジアの重要な輸出品になっており、アラブ人がアジアとヨーロッパ間のクローブ貿易を仲介していました。

          ○

中世ヨーロッパでのクローブは貴重品で、クローブなどの香辛料を使うことは一種のステータスシンボルになっていました。
イギリスのヘンリー5世(1387-1422)の時代、ある豪商がヘンリー王に金を貸し、後にこの借金の返済を免除しましたが、王への借金を帳消しにした証と自分の財力を示すために、貴族や他の商人が集まる場で王への借用証書を大量のシナモンとクローブを燃やした火の中に投げ入れてみせました。
これを見たヘンリー五世は「いかなる王もこのような贅沢はできない」と言ったといいます。

          ○

ヨーロッパからクーロブの原産地のモルッカ諸島に最初に乗り込んでいったのはポルトガル人でした。
1500年代の初め頃、フランシスコ・セラーノというポルトガル人を船長とした船がジャワ島などを探検した後、モルッカ諸島のバンダ諸島に到達し、ヨーロッパでは貴重品扱いのクローブがその島々では無造作に生い茂っているのを発見します。
その後、ポルトガルはモルッカ諸島の香料を独占し莫大な利益をあげました。

          ○

バンダ諸島にクローブが林立していたのはこの地がクローブの生育に適していたのはもちろんですが、クローブの生命力の強さにもよります。
クローブの木は土中の水分や養分を吸い取る力が強いため、クローブの周りには他の樹木が生えなくなり、クローブ林が生まれるのです。
また、インドネシアのこの地域では、子供が生まれるとクローブの木を植える習慣が且つてあり、この習慣もバンダ諸島にクローブが繁茂していた理由の一つとされています。

          ○

ポルトガルの成功を見たオランダも17世紀になって東南アジアへの航路を開拓し始めます。
そしてポルトガル人とモルッカ諸島現地人との不仲や、ポルトガルの国力低下に乗じてオランダがポルトガルに代わってモルッカ諸島の香料を占有するようになります。

クローブの価格をコントロールするため、オランダはモルッカ諸島の人々に対してオランダ人以外にはクローブを売らないように命じました。
栽培地もモルッカ諸島の特定地域に限定し、指定地以外に生えていたクローブは伐採したり焼却したりしてしまいます。
約200年もの間、オランダは世界のクローブ貿易を独占し続けました。

しかし、そのうちオランダ人以外へのクローブの密売が増え、1770年にはフランス人がモルッカ諸島からクローブの苗木を持ち出し、フランス領の島でクローブ栽培を成功させます。
その後、南米や西インド諸島、アフリカなどでもクローブの栽培が始まり、オランダのクローブ貿易独占は終焉を迎えます。
現在、アフリカのタンザニアのザンジバル諸島は原産地のモルッカ諸島をしのぐクローブの産地になっています。

<参考書籍>
井上宏生(2002)『スパイス物語—大航海からカレーまで』集英社
石井美樹子 (1997)『中世の食卓から』筑摩書房
吉田よし子(1998)『野菜物語—大地のおいしい贈りもの』TOTO出版

<関連商品>

ハーブスパイス館―Herb & spice book

ハーブスパイス館―Herb & spice book
ハーブティー―おいしく飲んで美しく健康に 57種のハーブからつくる192のハーブティー ハーブ&アロマ事典―味わう・つくる・香りを楽しむ95種のハーブ ホリスティックハーブ療法事典―日常生活の健康と症状にハーブの薬効を生かした決定版 こころと体に効くハーブ栽培78種―ハーブのすばらしい魅力を味わうために ハーブ事典―ハーブを知りつくすAtoZ
by G-Tools

|

« オクラとアフリカ | トップページ | きゅうりの白い粉 »

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/62471/12035535

この記事へのトラックバック一覧です: クローブの香り漂う島と大航海時代:

« オクラとアフリカ | トップページ | きゅうりの白い粉 »